【12月14日 marie claire style】1943年、フランス・パリ生まれ。父、母ともに俳優で、姉は故フランソワーズ・ドルレアック。10代の頃からいくつかの作品に端役で出演。本格デビューは60年の『Les Portes claquent』。63年には『悪徳の栄え』での演技で注目される。64年、世界的ヒットとなったミュージカル映画『シェルブールの雨傘』で大ブレイク。90年代になっても常に注目され、"大女優"の名にふさわしい活躍を続けている。92年、『インドシナ』でアカデミー賞主演女優賞にノミネート。98年、『ヴァンドーム広場』でヴェネツィア国際映画祭女優賞を受賞。今年6月、フランス映画祭の団長として来日を果たす。ますます注目の集まる世界のファッションミューズ、カトリーヌの素顔に迫る。

 若い頃の『昼顔』や『哀しみのトリスターナ』のカトリーヌ・ドヌーヴは、どこかミステリアスで、脆弱にみえたものだが、今春、東京でのフランス映画祭に団長として来日したカトリーヌは、女王然とした品格を漂わせていた。

 女優だった姉フランソワーズ・ドルレアックは、25歳で事故死してしまったが、母で女優のレネ・シモントは、106歳の現在も健在だというから、どうやら長寿の家系らしい。「自分が出ていた過去の映画なんか観ないことにしているの。そんなことより、先のことを考えた方がいいから」

 74歳の現在、彼女もまだ意気軒昂のようだ。肌艶もよく、ふっくらとしていて、大輪の花のような美貌は衰えていないことに驚かされる。

 東京で開催されたフランス映画祭に出品された、彼女の出演作品『ルージュの手紙』についてきいてみた。

「撮影に入る前は、こうしてみたい、といった考えがあったけど、自然にふたりの女性が距離を縮めていく様が、脚本の中で巧みに描かれていたので、その流れのままにすることにしたの」

──昔愛した男性の娘と再会する女性の心境を、どう思われましたか?
「相手役の助産師は、現実にとらわれていて、それまで真面目に生きてきたけど、私の役は子供を産まず、身勝手で、華やかに生きてきた、そんな女性だったわ。そうね、私からはほど遠い役よ」

──あなたとはそんなに違いましたか?
「違うといっても、だからといって私はこれまで"ありんこ"のように生きてきた訳ではないわよ」
そう言うと豪快に笑い出した。

──年老いることについて。
「そうね。考えてみると、老いるのって、とても退屈なことだと思う。だから私はいつも別のことを考えるようにしているの」

──若い頃の演技とは異なるとお考えですか?
「若い頃はね、私は人形にすぎなかったの。大人しくして、ただじっとしていただけ。監督に説明された他人の人生を、自分の中にそのまま取り入れて、それを表現していた。それだけだった」

──『ルージュの手紙』のような家族の絆について、どうお考えですか?
「私は娘のキアラ(・マストロヤンニ)にも始終会っているし、ひとりで暮らしていても、家族との関係は普通に良好だと思っているわ。それ以上でも、以下でもない」

 それにしても最近の彼女の活躍ぶりには、目覚ましいものがある。『ルージュの手紙』の次も新作が控えていて、すでに完成している『Bonne Pomme』では、『終電車』で名コンビだった名優ジェラール・ドパルデューとの久々の顔合わせでフレンチ・コメディーを演じ、口は悪いが魅力ある女性を演じている。

 27歳の美男のラップミュージシャン、ネクフーと共演した『Tout nous separe』では、大女優との共演に怯えていた映画初出演のネクフーと、和気藹々の撮影現場だったそうだ。

「キアラとの母娘共演の映画の企画もあるのよ。それがとても楽しみなの」

 過去の話はしたくない、というカトリーヌは、こうして次から次に今後の作品について話し続ける。

 そうした話をする時のカトリーヌは笑いが込み上げてくるようで、表情はとても70代の女性とは思えない。彼女の若さの秘訣は一体どこからきているのか。

「もともと私は植物が大好きなの。一本の草をみつめているだけでも、心穏やかになれるの。すっと伸びた茎や、尖った葉先をみているだけでも、自然界の美しさに見とれてしまう。後ずさりする草なんかないわ。いつも少しずつ伸びているのよ。素晴らしいことだと思わない? トレーニングや若返りのためには、なにもしていないけど、私は植物が大好きだし、とても大切にしている」

 確かにパリで園芸博覧会がある時は、よく彼女の姿をみかけた。そうしたプライベートタイムを充分に活用して、ストレスを発散しているから、無理のない自分の道を見いだすことができるのだろうか。

 年を取ってくると、丸くなる人もいるけれど、カトリーヌの場合は一切その気配はないようだ。その方が彼女には相応しい。だが柴犬の愛犬ジャックといる時だけは、すっかり甘い顔をするようだ。

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(c)marie claire style/text: Kasumiko Murakami/photo: Alice Springs/Maconochie Photography