【11月30日 marie claire style】「いま少女とブタの映画を撮っている。『E.T.』のような映画を作りたいんだ」。韓国の鬼才、ポン・ジュノ監督が来日した時に、次回作の話を聞いた。『スノーピアサー』に続いてハリウッドで。しかもNetflixオリジナル映画である。カッティングエッジな作品を次々と送り出すブラッド・ピットの映画製作会社「プランB」と組んで作られるという。どんな映画になるのだろうと期待が高まった。

 ポン・ジュノは『殺人の追憶』という大傑作を生んだアジアを代表する名監督だ。『グエムル漢江の怪物』『母なる証明』と韓国で大ヒットを続け、国民的映画監督となった。僕は同じアジアの映画人として数年前から親しくさせてもらっている。以前、釜山映画祭に行った時にポン・ジュノ監督と一緒に入った居酒屋で、俳優のウォンビンとポン・ジュノ監督が2ショットで焼酎のポスターのキャラクターになっていた。熊のような見た目の巨漢の映画監督は国民的アイドルでもあるのだ。

 韓国の山奥で暮らす少女・ミジャは、巨大生物・オクジャの世話をしながら平和に暮らしていた。オクジャとミジャは子供の頃から一緒に育ち親友のような存在だった。ところがある日、オクジャがニューヨークに連れ去られてしまう。実はオクジャは、国際的大企業が"ある目的"のために開発した"特別な動物"だったのだ。長い飼育実験を終え、回収に来た。オクジャの正体とは??親友を取り戻すため、ミジャはニューヨークへ旅立つのだが・・・。

 いまNetflix映画は、ハリウッドのメジャースタジオに対抗して野心的な作品を生み出す場となっている。本作は第70回カンヌ国際映画祭においてネット配信作品としてはじめてコンペティション部門に出品され話題となった。審査員長を務めたペドロ・アルモドバル監督が「映画館で公開される予定のない映画は、最高賞パルム・ドールのみならず、他のどんな賞も受賞するべきではないと考える」と発言し、大きな波紋を呼んだ。

 Netflixだけでなく、AmazonやGoogleも映画製作・配信を始めている。「映画館で観られない映画」はこれから増えていくのだろう。製作者にとっても、企画性が高く自由なクリエイティブが担保されているネット配信映画は魅力的な場所になるのかもしれない。

 個人的にいえば、映画は映画館で観たい。でもこの連載自体が「ジタク映画祭」というタイトルであり「映画館で見逃した映画を、ジタクで観てみよう」というコンセプトで続けてきた。多様な映画が作られ、それが観られる場が多彩にあることはよいことだとも思う。その切磋琢磨のなかで、あたらしい映画が生まれてくるかもしれない。本作もとても特異な映画だ。Netflixがなければ生まれていなかっただろう。寡作でもある鬼才、ポン・ジュノ監督の新作が観られたことをなにより喜びたい。

■プロフィール
川村元気(Genki Kawamura)
1979年、横浜生まれ。映画プロデューサーとして『電車男』『告白』『悪人』『モテキ』『バケモノの子』『バクマン。』『君の名は。』『怒り』を製作。2010年、米The Hollywood Reporter誌の「Next Generation Asia」に選出され、翌年には優れた映画製作者に贈られる「藤本賞」を史上最年少で受賞。12年には初の小説『世界から猫が消えたなら』を発表。同書は本屋大賞へのノミネートを受け、140万部突破のベストセラーとなり、映画化された。他、著書として、小説『億男』、対話集『仕事。』『理系に学ぶ。』『超企画会議』など。2年ぶりとなる最新小説『四月になれば彼女は』が文藝春秋より発売中。

■関連情報
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(c)marie claire style/selection, text: Genki Kawamura