【6月29日 marie claire style】肌寒い風が吹き抜けていくなかで、白や青、イエローのオーガンジーのロングドレスが、ふわりと揺れている。肩を出したモデルたちは、それでも寒そうな気配は微塵もみせずに颯爽と歩いていた。

「ディオール(Dior)」のオートクチュールのショーを銀座のど真ん中の舞台でみるというのは、なんと贅沢なことだろう。それにその日の「ギンザ シックス(GINZA SIX )」の屋上には、秘密めいた迷宮庭園も広がっていた。

「テーマは迷宮です。伝統的な庭園や迷宮の中に、花をテーマにしたドレスが現れたり、消えたりするの。花はレースに飾られ、その上をオーガンジーで包まれていて、現実のものではなく、記憶の花を表現しているのです」

 この日披露された2017年春夏のオートクチュールコレクションでは、日本のために特別に9体を追加で制作したのだと、デフィレのために来日したマリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)が教えてくれた。

 明るいブロンドの髪に、光に満ちて活き活きした瞳、マリア・グラツィアは、ローマ生まれの生粋のローマっ子だという。「ディオール」の前、「ヴァレンティノ(VALENTINO)」にいた頃は、ヴェスパでアトリエに通っていたというから、なかなか活発な女性のようだ。

「花飾りをよくみて。すべて手作りなの」

 モード界の帝王といわれたクリスチャン・ディオール(Christian Dior)によって設立され、まだ戦後の混乱期の1947年、ニュールックと呼ばれる新しいシルエットで一世を風靡した老舗メゾンも、今年で70周年を迎えるという。昨年は初の女性アーティステック ディレクターとしてマリア・グラツィアを迎え入れ、新たな船出を切っている。

「フランス人は勇敢だと思ったわ。私のように危険を恐れない者を、メゾンに迎えてくれたのだから。最初は不安がなかったといったら嘘になるわ」

 さすがのローマっ子も、パリのモード界で王道中の王道を歩んできた名門「ディオール」で、コレクションを手掛けることになった時は、身がすくんだに違いない。

「日本の伝統を重んじるこころは、素晴らしいと思うし、それが新しいもの、未来へ向かうものを受け入れる余裕を生み出していると思うの。その意味では、『ディオール』の考え方と相通じるものがあるわ」

 植物や動物、星占い、タロットといったモチーフを使ったコレクション。ローマ、パリ、東京、世界の各都市で、彼女は女性たちを虜にしている。

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(c)marie claire style/Photo:Brigitte Lacombe、text: Kasumiko Murakami