【6月22日 MODE PRESS】写真家・映画監督の蜷川実花(Mika Ninagawa)が、今もっとも旬の「オトコたち」約30名のポートレートを撮影した展覧会『IN MY ROOM』がパルコミュージアムで開催されている。同展は、雑誌「EYESCREAM」で3年間にわたり連載されたシリーズ「蜷川実花のプライベートモード」を元に構成されたもの。菅田将暉(Masaki Suda)や綾野剛(Go Ayano)といった人気俳優やモデル、ミュージシャンなどを被写体とし、その色気漂う肖像の数々が注目を集めている。

パルコミュージアム会場の様子(2016年6月17日撮影)。(c)MODE PRESS/Mana Furuichi

■イケメン迷路、出現

 この展覧会を訪れた人がまず驚かされるのは会場の作りだ。それぞれのモデルごとに小部屋が作られており、入場者はそれを次々と迷路のように歩み進めていく形となっている。蜷川はその意図をこう語る。「来た人に体感してもらえる展示を目指した。写真だけ見るのだったら本でも見られるし、やっぱり展覧会に来た甲斐があるものがいい。『一蘭』のような仕切りのあるラーメン屋さんは集中して食べられる。そんなふうに一人一人に集中して何十人も見たらすごくおなかいっぱいになるだろうなと思った(笑)」。個性豊かなモデルたちを壁で区切った展示は、それぞれの魅力を存分に味わうことができる。「思ったより濃密で面白い展示になりました。初めてやる形だけど、すごく成功したなと思っています」と蜷川は自信をのぞかせる。

パルコミュージアム会場の様子(2016年6月17日撮影)。(c)MODE PRESS/Mana Furuichi

■あえて得意技を封印

 蜷川と言えば、カラフルでガーリーな世界観で知られるが、今回のポートレートは何の変哲もないホテルや公園などでシンプルに撮影されたものが多い。「自分の中にどれだけの写真力があるのか、試してみたかった。自分の得意技を封じ込めて、どれだけ今の私が撮れるのか。だからこの撮影の前日はとても緊張しました」と蜷川は語る。凝ったセットも万全に調整されたライトもない場所で撮ることは一つの挑戦だった。「場所が助けてくれるようなロケーションをあえて選んでいないので、私がその人とどう向き合ったかということが写真にそのまま出ていると思う」

パルコミュージアム会場の様子(2016年6月17日撮影)。(c)MODE PRESS/Mana Furuichi

■オトコたちの素顔

 ポートレートの中には、蜷川のアトリエで撮影されたものも多く、まさしくプライベートな視点で切り取られている。撮影中、蜷川はほとんど言葉を使わないというが、お互いの呼吸のあった親密な関係性は写真からも感じ取れる。「MIYAVIくんは初めての撮影だったかな。斎藤工(Takumi Saitoh)くんは何度も撮らせてもらっているのであっと言う間にリラックスした感じで撮れた。いつも撮らせてもらっている人と、まったく『初めまして』の人が入り混じっていて、毎回アプローチの仕方が違うからすごく面白かった」

 また被写体のチョイスもユニークだ。窪田正孝(Masataka Kubota)や伊勢谷友介(Yusuke Iseya)といった人気俳優の中に、チームラボの猪子寿之(Toshiyuki Inoko)やミュージシャンの中村達也(Tatsuya Nakamura)といった顔ぶれも登場。「この人面白いな、と思える人ばかり撮らせてもらいました。もし100人くらい撮れるなら、もっといろんな職種の人をいれたかったな。猪子くんは撮られるのが仕事じゃないから、すごく照れてたのもかわいかった(笑)」と蜷川は振り返る。

(c)Mika Ninagawa

■聖地、パルコミュージアム

 会場であるパルコミュージアムは蜷川にとって特別な場所だ。2001年、「第26回木村伊兵衛写真賞」受賞発表後に開催した展覧会『まろやかな毒景色』のことは今でも記憶に新しいという。「とにかくパルコでできることが超嬉しくて! 小さい頃から憧れの場所だったので、パルコでワンマンショーができるって本当に大きな意味を持っていた」。以降、2003年『Liquid Dreams』、2008年『蜷川妄想劇場』、2012年『へルタースケルター』と継続的にパルコで個展を発表してきた蜷川は、まさにパルコゆかりのアーティストと言える。同会場は8月7日に一時休業をするが、今回はその締めくくりにふさわしい豪華展覧会となった。

■写真から絶対逃げない

「やっぱり新しいことをするときは緊張する。でもそれを押しのけられるくらい、自分がどれだけやってきたかっていうのがある」と写真を始めて20年の蜷川は語る。「どんな職業の人でも第一線で活躍している人たちはみんなとんでもない努力をしている。写真においては、とにかく量をこなして、『撮る』っていう行為が呼吸をするのと同じくらいになるまで撮ることが大事じゃないかな。私も学生のときは『これ(学校で習っていること)は自分がやりたいことではない』って思っていたから怠け者だったけど」と蜷川は苦笑いする。「でも写真や美術をやりたいって思った瞬間に、それは自分のやりたいことだから死ぬほど努力した。言い訳がきかないし、やりたいことだから一切逃げない」。そう語る蜷川は凛々しく、覚悟を決めた人間ならではの輝きを放っていた。

「得意技」を封印してなお、新たな魅力を発信し続ける蜷川ワールド。より写真力にフォーカスした最新作『IN MY ROOM』には、彼女のアーティストとしての強い決意表明と、写真への変わらぬ愛が溢れていた。

■お問い合わせ先
パルコミュージアム/03-3477-5873

■展覧会概要
・蜷川実花写真展「IN MY ROOM」
会期:開催中~7 月4 日
10:00~21:00(最終日は18:00 閉場/入場は閉場の30 分前まで)
会場:PARCO MUSEUM パルコミュージアム(渋谷パルコ パート1/3F)
東京都渋谷区宇田川町15-1
観覧料:一般500 円 学生400 円 小学生以下無料
※有料入場1名につき、いずれか1枚、限定ポストカードをプレゼント

■書籍概要
・蜷川実花『IN MY ROOM』
発売:6 月30 日
価格:3000 円(税抜)
※会場にて先行発売中

(c)蜷川実花写真集『IN MY ROOM』(スペースシャワーネットワーク)

■関連情報
・写真展 公式サイト:http://www.parco-art.com/web/museum/exhibition.php?id=958
・書籍 公式サイト:http://books.spaceshower.net/books/isbn-907435851
・蜷川実花 公式サイト:http://www.ninamika.com/
(c)MODE PRESS