【4月24日 AFP】英国のウィリアム王子(Prince William)と妻キャサリン妃(Catherine, Duchess of Cambridge)の第2子誕生はカウントダウン段階に入った。ファッション業界に多大な影響力を持つ英王室に誕生する新たなメンバーは、女児であれ男児であれ世界のファッショントレンドを左右することになるだろう。

 キャサリン妃や第1子のジョージ王子(Prince George)が身に着けたアイテムがたちまち完売するマーケティング現象は「キャサリン効果」と呼ばれ、ソーシャルメディアやオンラインショッピングの隆盛が、これをさらに勢いづけている。

 とりわけ人気が高いのがキャサリン妃のマタニティーウエアやジョージ王子の子供服だ。「2人とも世界的な影響力があるんです」と語るのは、トレンド分析会社トレンド・アトリエ(Trend Atelier)のジェラルディン・ワリー(Geraldine Wharry)代表。「誰もが、生まれてきた赤ちゃんが着る服や出産後のキャサリン妃のファッションを見たいと待ち望むことになるでしょう」

 ソーシャルメディアによって、英王室ファンたちは写真で見たキャサリン妃が着ていたのと全く同じアイテムを探し出し、同妃が高級なデザイナークローズと手頃なハイストリートファッションブランド服の両方を愛用していることも発見するのだ。

■「シンデレラストーリー」を商売に

 キャサリン妃が着用した服とオンラインショッピングのリンクを掲載したウェブサイト「WhatKateWore.com」(ケイトが着ているもの)をスーザン・ケリー(Susan Kelley)氏が立ち上げたのは4年前だった。「それはもう爆発的に当たりました」とケリー氏。1か月の閲覧回数は100万回近くに達した。英語圏からのアクセスが主だが、アクセス国は多岐にわたりチェコやリビアでも閲覧されているという。

 こうした現象は何よりも、中流階級に生まれ育ったキャサリン妃が大人になって王子と結婚するという「シンデレラストーリー」を信じたいという気持ちから派生しているとケリー氏は分析する。「新たなテロのニュースでも、おぞましい事件でもない。明るい話題ですから」

 ジョージ王子の服に関するサイト「WhatPrinceGeorgeWore.com」(ジョージ王子が着ているもの)もあるが、第2子の誕生をもって「WhatKatesKidsWore.com」(ケイトの子どもたちが着ているもの)へと名称が変更される予定だ。

 ケリー氏は、新たに誕生するロイヤルベビーが女児であれば、関心は一気に高まるとみる。「もちろん男の子2人だって喜ばしいけれど、女の子ならもっとわくわくするという期待感があるようです」

 コンサルティング会社ブランド・ファイナンス(Brand Finance)は、ブランドとしての英王室の価値を536億ポンド(約9兆6000億円)と評価する。まだ2歳にもならないジョージ王子でさえ、そのブランド影響力を担う一員なのだ。

 英人気雑貨ブランド「キャスキッドソン(Cath Kidston)」は、王子が着ていた衛兵がデザインされたニットのベストを「強い要望に応えて」、再発売を検討しているという。

 英誌プリマ・ベビー(Prima Baby)の美容・ファッションエディター、キャサリン・ハドソン(Catherine Hudson)氏によれば、キャサリン妃がジョージ王子に着せるファッションアイテムはクラシックなものが基本だ。「たまには流行を取り入れてみるかもしれませんが、(第2子が)男の子でも女の子でも基本的には伝統のスタイルを守っていくでしょう。これからも英国のデザインを愛用していただきたいですね」

 誕生したのが女児ならば、キャサリン妃お気に入りブランドのデザイナーらが女児用子供服のコレクションを発表するかもしれないと、ハドソン氏はみている。

 ファッションブランド側も「英王室ご愛用」とされる価値をはっきりと認識している。自社のウェブサイトに「WhatKateWore.com」経由でアクセスがあれば同サイトに広告料を支払っているブランドもあり、「WhatKateWore.com」への広告掲載依頼が許容スペースを超える状況だという。

■キャサリン妃がトレンドをけん引

 「上品」なマタニティーウエアというトレンドはキャサリン妃がけん引役になったとみられている。同妃が着用した英マタニティーブランド「セラフィン(Seraphine)」のアイテムは全て完売。新興ブランドだったセラフィンは同妃がひいきにしてくれたことで急速な成長を遂げたと、同社広報は語った。

 オンライン小売り大手エイソス(ASOS)も、キャサリン妃が3月に着用した63ドル(約7500円)の水玉ドレスが「数分」で完売したと明かしている。

 英王室の報道官はキャサリン妃の服選びに関するコメントはしないとしながらも、同妃にスタイリストはついていないと述べている。これほどまでに世間の耳目を集めるセレブとしては異例のことだ。

 それでもキャサリン妃はの服選びには明らかな戦略があり、ときには「ファッション外交」の要素を持つ。例えばカナダ訪問ではカナダ生まれのアーデム・モラリオグル(Erdem Moralioglu)氏のデザインによるレースのドレス、シンガポール訪問ではシンガポール生まれのデザイナー、プラバル・グルン(Prabal Gurung)氏のシルクのドレスをそれぞれ着用している。

■ウィリアム王子への関心度は?

 これと対照的なのが、夫のウィリアム王子だ。王子のファッションに対する関心度は、妻と息子とは比較にならないほど低い。

 ケリー氏によると、たまにはウィリアム王子が着用したスーツや「あの趣味の悪いスニーカー」に関するコメントもある。だがウェブサイト「WhatWilliamWore.com」(ウィリアムが着ているもの)の設立を考慮するまでには至っていない。(c)AFP/Naomi O'LEARY