■「薬としての細菌」

 治療可能だが衰弱性の疾患であるうつ病は、個人の行動や感情に影響を及ぼす。「静かな流行病」と呼ばれることもあり、毎年世界で発生している約80万件の自殺の一大要因となっている。

 抗うつ薬は現在、多くの国々で最も一般的な処方薬となっているが、ラース氏は自身のチームの研究が、うつ病に対するより賢明な新治療法の開発に向けた道を開く可能性があると指摘している。

「ヒト由来の細菌を混合したものを治療薬として利用することは『薬としての細菌』とよく言われるが、ここに将来性があると私は本気で考えている」と、ラース氏は述べた。

 研究チームは、腸内細菌500種類以上のゲノム(全遺伝情報)を調査し、一連の神経刺激性化合物を生成するための各細菌の能力を分析した。神経刺激性化合物は、脳機能に影響を与えることが判明している化学物質。

 その結果、さまざまな種類の精神機能に関連する化合物を生成する能力を持つ腸内細菌が数種類見つかった。(c)AFP/Patrick GALEY