【1月27日 AFP】ネパールで横行する、登山客のヘリコプター救助をめぐる不正の取り締まりに政府が動かなかった場合、同国を訪れる観光客は来月以降、旅行保険の適用を受けられなくなるとの警告を、国際的な保険業者が24日、発した。

【記者コラム】「世界の屋根」を取り巻く保険金詐欺、エベレスト

 昨年1年間にネパールを訪れた観光客は史上初めて100万人の大台を突破したばかりだが、保険会社が大挙して適用を停止すれば、同国の生命線である観光業が深刻な打撃を受けかねない。

 AFPは昨年の調査報道で、現地の登山業者が観光客に不要かつ高額なヘリによる下山を無理強いしたり、一回の飛行に対して数件の保険金請求を行ったりする不正の実態を明らかにした。ヘリによる救助が2018年の1~5月で1300回、保険金請求額が650万ドル(約7億1000万円)超に上ったことを受け、ネパール政府は6月に調査に着手した。

 この調査では、ヘリ運航会社やトレッキングを扱う旅行代理店、医療機関など15団体が不正に関与していると特定された。ただ、疑惑を指摘された業者に対して、今のところいかなる措置も取られていない。

 アイルランドに拠点を置き、旅行保険会社の代理で医療救助を行っているトラベラー・アシスト(Traveller Assist)はネパールの観光相に書簡を送り、政府が2月15日までにこうした業者に法的措置を取らなかった場合、取引先の保険各社は保険証券の発行を停止すると警告した。

 AFPが確認した書簡によると、同社のジョナサン・バンクロフト(Jonathan Bancroft)社長は「はっきりさせておくが、これは最後通告だ」とした上で、「われわれの取引先がネパールで旅行保険証券の発行を停止すれば、まもなく他の保険会社も追随するだろう」と述べている。

 ネパールの観光相はAFPに対し、不正に関与した業者に罰を与え、法的措置を取るために現在捜査が行われていると語った上で、「対応策にしっかりと取り組んでいる。この点に関して政府は妥協しない」と強調した。(c) AFP