【1月17日 AFP】数千万人規模の早死にを防ぎ、地球の破滅的な被害を避けるために、人類は食料の生産・消費方法を根本的に変えなくてはならない──。そう警鐘を鳴らす画期的な研究論文を、国際研究チームが17日、英医学専門誌「ランセット(Lancet)」に発表した。2つの目標を達成する鍵は、砂糖と赤身肉の消費量をほぼ半減させる一方、野菜や果物、ナッツ類の消費量を倍増させることだと訴えている。

 50ページに及ぶ論文をまとめたのは、「食料と惑星、健康に関するEATランセット委員会(EAT-Lancet Commission on Food, Planet, Health)」の研究者37人。共著者の一人である英ロンドン大学(University of London)のティム・ラン(Tim Lang)教授は「私たちは破滅的な状況に置かれている」と危機感を示す。

 現在、世界全体で10億人近くが飢える半面、約20億人が健康に良くない食べ物を取りすぎ、それがもとで肥満や心臓病、糖尿病が広まっている。報告書「世界の疾病負担研究(Global Burden of Disease Study)」の最新版によると、不健康な食事が原因で、毎年最大で1100万人が回避可能な早すぎる死を迎えているという。

 一方で、食料の生産から流通、消費に至るフードシステムは温室効果ガスの最大の排出源でもあり、生物多様性の喪失や、沿岸部や河川などでの藻類の異常発生を引き起こす主な原因にもなっている。地表の半分近くを変質させてきた農業は、世界の淡水供給量のおよそ7割を消費している。

 共著者の一人、ドイツの気候変動ポツダム研究所(PIK)のヨハン・ロックストロム(Johan Rockstrom)所長はAFPの取材に、地球が人間活動の影響を吸収できる容量の限界「プラネタリー・バウンダリー」の範囲内で、2050年に100億人に食料を供給できるようにするには、「健康な食事を採用し、食品廃棄物を削減し、環境負荷を低減する技術に投資する必要がある」と述べている。(c)AFP/Marlowe HOOD