■壊滅的な被害を免れそうな地域

 複数の気象災害が一度に発生するリスクは地域によって異なり、人類が速やかに温室効果ガスを削減できるかどうかによっても変わってくる。

 人類が気温上昇を産業革命前と比べて2度未満に抑えることができれば、今世紀末にニューヨーク市が猛烈な暴風雨といった危険な気象現象に見舞われるのは1年に1回程度で済むだろう。

 しかし温室効果ガス排出が現状のペースで進めば、ニューヨーク市は同時に最大で4つ、ロサンゼルスや豪シドニーは3つ、メキシコの首都メキシコ市は4つ、ブラジルの大西洋沿岸では5つの危険な気象現象に見舞われる恐れがある。どの予測シナリオでも、最も大きな被害を受けるのは熱帯沿岸地域だ。

 研究チームは、同時多発的な気象災害リスクを調べるため、数千件の査読論文からデータを集め、火災、洪水、雨量、海面上昇、土地利用の変化、海洋の酸性化、暴風雨、温暖化、干ばつ、淡水供給への気候変動の影響を分析。地球温暖化の「副産物」が人の健康、食料、水の利用、経済、社会基盤、安全保障の6分野に与える影響を調べた。

 論文の共著者の一人、米ウィスコンシン大学マディソン校(University of Wisconsin-Madison)グローバルヘルス研究所(Global Health Institute)のジョナサン・パッツ(Jonathan Patz)教授は「熱波や猛烈な暴風雨といった気候変動の直接的な脅威だけを注視していると、より大きな脅威の不意打ちを受けることは避けられないだろう。脅威が組み合わさることで社会への影響はより大きいものになり得る」と警告する。

 論文によれば、極地方に近い温帯に位置する豪タスマニア(Tasmania)やカナダやロシアの一部など、とりわけグリーンランドは気候変動による壊滅的な被害を免れそうだという。

 時間の経過に伴って気候変動が地球に及ぼす影響を示すインタラクティブマップが「https://bit.ly/2QajjZw」に掲載されている。(c)AFP/Marlowe HOOD