【10月1日 AFP】マグニチュード(M)7.5の地震と津波で大きな被害を受けたインドネシア・スラウェシ(Sulawesi)島の都市パル(Palu)では9月30日、スーパーマーケットやガソリンスタンドで大勢の住民らによる略奪行為が相次いだ。被災地はわずかな支援物資が届き始めたばかりで、水や食料、燃料などの不足が深刻化している。当局は10月1日、倒壊した建物の中に閉じ込められた人らの必死の捜索を続けているほか、感染症の拡大を防ぐため大規模な埋葬を準備している。

「援助はまだこない。俺たちは食べなきゃいけないんだ」。9月28日に大地震と津波に襲われたパル。店から商品を奪った男性はそう叫んだ。別の男性は「非常事態だから」と大声で言った。

 市中心部では30日、割れたガラスが散乱するなか、壊れたバリケードを通り抜けてスーパーマーケットに殺到する多数の住民の姿が見られた。

 大勢の男女がビスケットなどの菓子、赤ちゃん用のおむつ、カセットガスボンベ、ティッシュペーパーなどをプラスチックのごみ袋や籠に詰め込めるだけ詰めて持ち去っていた。

 略奪が行われている間にも2度の小さな余震があり、「地震だ、地震」という悲鳴が上がった。それでもスーパーマーケットにやって来る原動機付き自転車の流れは止まらず、店の前に大勢の人が集まった。

 10代の若者の一団は「この状況じゃこうするしかない。食料、水、何もかも不足している」と話した。「持っていけるものは何でも持っていく。料理さえできない。だから略奪しているんです」

 一握りの警察官の姿もあったが、あっという間になくなった法と秩序を回復させる手だてがないのか、あるいはその気がないのか、ただ立っているか道を隔てた警察署から見守っているだけだった。

 ガソリンスタンドも同様の状況で、多くの人が燃料用の容器やソフトドリンクの空き瓶、台所用品に燃料を入れていた。ある女性は「手頃な値段で売っているならいいのですが、生活必需品の値段を一気につり上げられてしまうとね」と略奪を正当化した。

 国家防災庁の報道官は、犠牲者はさらに増えるとの見通しを示すとともに、「感染症の拡大を避けるため、犠牲者の大規模な埋葬を始める予定だ」と明らかにした。1日中にも始めるという。(c)AFP/Bagus SARAGIH