【8月17日 AFP】コムギのゲノム(全遺伝情報)を初めて完全解読したとの研究結果が16日、発表された。今後数十年にわたり増大し続ける世界人口に食糧を供給する助けになる画期的な成果だと、専門家らは指摘している。

 世界人口の3分の1以上の食糧を賄うコムギは、人の食事で肉類を上回る量のタンパク質を供給し、摂取する食物エネルギーの約5分の1を作り出している。

 だが、気温が高く乾燥した天候では栽培がより難しくなるため、気候変動に起因する地球温暖化の進行に伴い、こうした困難な状況がさらに悪化することが予想される。そうした理由から、気温が上昇する環境でより少ない水を用いて栽培できる、より病気に強い品種が世界には不可欠だと専門家らは主張している。

 英ロザムステッド研究所(Rothamsted Research Institute)の機能ゲノム科学者コスチア・カニュカ(Kostya Kanyuka)氏は「今回の結果により、農業的に重要なコムギ遺伝子を同定する取り組みが大幅に加速される。これには主な真菌病と闘う一助となると考えられる遺伝子も含まれる」と話し、「これは小麦育種者らにとって直ちに大いに役立つ結果であり、新たなエリート品種の開発を加速するに違いない」と付け加えた。

 米科学誌サイエンス(Science)に掲載された論文によると、コムギの包括的なゲノムの解読は13年に及ぶ歳月を要した「途方もなく大きな難題」だったという。なぜならパンコムギ(学名:Triticum aestivum)のゲノムにはヒトのものより遺伝子が5倍も多く含まれているからだ。

 国際コムギゲノム解読コンソーシアム(IWGSC)が主導した今回の研究によると、20か国200人の科学者チームがゲノムの完全解読に成功したのは、世界で最も広く栽培されている作物パンコムギの一品種「チャイニーズ・スプリング(Chinese Spring)」だという。

 論文では「2050年までに96億人に達すると予測される世界人口の食糧需要を満たすには、コムギの生産性を年に1.6%上昇させる必要がある」と記された。

 コムギのゲノムには10万7891個の遺伝子が含まれており、その複雑なゲノムには、DNAを構成する塩基対が160億対含まれている。それに比べて、ヒトの遺伝子は約2万個で、塩基対は30億対だ。(c)AFP