【8月15日 AFP】オーストラリアの上院議員が移民問題の「最終的解決」を要求し、「欧州系キリスト教徒」を優遇する白豪主義政策の復活を訴えたことに対して、同国では15日、非難の声が広がっている。

 クイーンズランド(Queensland)州から選出された、カッター・オーストラリア党(Katter's Australian Party)のフレーザー・アニング(Fraser Anning)議員は上院で初演説し、アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)政権下のナチス・ドイツ(Nazi)で、欧州でのユダヤ人絶滅に関連して用いられた悪名高い言葉を口にし、議員らに衝撃を与えた。

 アニング議員はさらに、イスラム系移民の入国禁止を主張。1901年から70年にわたって実施された人種に基づく白豪主義政策を擁護。「われわれは国家として、ここに来ることを認められた人々は、オーストラリア社会を歴史的に構成する欧州系キリスト教徒が反映されるものであるべきと主張する権利を与えられている」と述べ、怒りを招いた。

 さらに、移民数削減とイスラム教徒の入国禁止を訴え、移民やイスラム教徒が「少しも同化および統合できないことを一貫して証明してきた」として自身の主張を正当化。「イスラム教徒全員がテロリストではないが、近頃のテロリストが全員イスラム教徒であることは確かだ。それならば、どうしてイスラム教徒をさらにここへ連れてきたいと思うのか?」と述べ、「移民問題の最終的解決はもちろん、人々による投票だ」と付け加えた。

 アニング議員の発言はあらゆる立場の政治家からの反発を招き、マルコム・ターンブル(Malcolm Turnbull)首相も、オーストラリアは多文化社会に成功した世界有数の国だと強調。「私たちはいかなる形の人種差別も拒絶し、非難する。そしてアニング上院議員の発言は、正しくも私たち全員に非難、拒絶される」と述べ、「最終的解決」という言葉は「ホロコースト(Holocaust、ユダヤ人大量虐殺)で亡くなったユダヤ人600万人の記憶に対する恐ろしい侮辱だ」と非難した。(c)AFP/Martin PARRY