■生活環境と文化がカギ?

 ゴンザレス・フォレロ氏とアンディ・ガードナー(Andy Gardner)氏のチームは今回の研究で、環境や社会に関する問題に直面することが脳の成長に測定可能な影響を及ぼすかどうか、もし及ぼす場合はどの程度の影響が及ぶかを測るための数理モデルを開発した。

 モデルの「脳」には、悪天候や険しい地形で獲物を見つける、かびや暑さで傷まないように食物を保存する、干ばつの最中に水を蓄えるなどのさまざまな環境上の難題に直面させた。

 また、個人や集団の間の協力や競争が脳の成長に及ぼす影響を調べるために、社会的な課題も同時に取り入れた。

 興味深いことに、協力は脳の大きさの減少と関連があると、研究チームは指摘している。その理由はおそらく、協力関係を築くことで個人が互いの持つ資源に依存することが可能になるとともに、脳自体をより小さなサイズに成長させることでエネルギーの節約が可能になるからだと考えられる。

 ゴンザレス・フォレロ氏は、AFPの取材に「ますます困難な環境上の問題に直面するほど脳が拡大するが、社会的要求は人間サイズの脳をもたらすには至らないことが、今回の研究で分かった」と語った。

 だが、人間の脳が厳しい環境に生息する他の動物よりも大きくなった理由は何だろうか。

 それはおそらく、文化のおかげだと思われる。文化のおかげで、あらゆることを独力で解決しなければならないのではなく、他者からスキルを学習することが可能になる。

「人間の脳の大きさをもたらしたのは、困難な生活環境と文化の相互作用であることを、今回の結果は示唆している」と、ゴンザレス・フォレロ氏は話した。(c)AFP/Mariëtte Le Roux