【1月10日 AFP】中国の習近平(Xi Jinping)国家主席と、同国を初めて公式訪問中のフランスのエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領は9日、数十億ドル(数千億円)規模の事業契約の調印に立ち会った。両国の通商関係の是正を目指す動きの一つだが、仏側からは中国企業による「略奪的な投資」を警戒する声も上がっている。

 マクロン大統領の訪中2日目、原子力や航空など主要産業で仏中の企業が調印した。仏原子力大手アレバ(Areva)と中国国有の中国核工業集団(CNNC)は100億ユーロ(約1兆3000億円)かけて中国国内に使用済み核燃料再処理施設を建設する覚書に調印した。

 欧州航空機大手エアバス(Airbus)は中国の複数のパートナー企業と、A320型機を天津(Tianjin)で月6機生産する契約を結んだと発表したが、中国企業によるエアバス機の大量発注はなかった。

 中国ネット通販大手の京東集団(JD.com)は今後2年で高級ワインやコニャックなど20億ユーロ(約2700億円)のフランス製品を中国の消費者に販売する計画を発表した。

 マクロン大統領によると、中国側は16年間に及んでいるフランス産牛肉の禁輸措置を、今後6か月以内に解除することにも同意したという。

 両首脳は、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定(Paris Agreement)」からの離脱を表明した中、気候変動対策を強化していくことでも一致した。

 さらにマクロン大統領は、テロ資金調達対策で春にも会合を開く準備を進めていくため、両国が連携を図ることに習主席が同意したと述べるとともに、アフリカ、シリア、イラクでの紛争の「政治的な解決」だけがテロの脅威を終わらせることができるという考えを両首脳が共有していると明らかにした。

 習氏は、両国は高官級の通商交渉をさらに行うべきだという考えを示した。また自身が提唱し、1兆ドル(約110兆円)を投入予定のシルクロード(Silk Road)経済圏構想「一帯一路(One Belt One Road)」にマクロン氏が支持を表明したことも歓迎した。

 約50人の企業経営者を連れて訪中したマクロン氏は、習氏に馬を贈ったり、気候変動問題で自身が掲げるスローガンを中国語で発音しようとする動画を公開したりして友好ムードを演出したものの、300億ユーロ(約4兆円)の対中貿易赤字を抱えるフランスは他の欧州諸国と同様、中国との貿易不均衡の解消を目指しており、中国の巨大市場への互恵的なアクセスを認めるよう要求している。

 マクロン氏と共に訪中したブリュノ・ルメール(Bruno Le Maire)仏経済相は記者団に対し、中国側が提示したフランス国内での計画の「多く」を拒否したと明かし、「わが国が認めるのは長期的な投資であって、略奪的な投資ではない」と指摘した。(c)AFP/Laurence BENHAMOU