【9月6日 AFP】大腸がんのリスクを減らすと近年報告されているアスピリンの日常的な服用について、6日に発表された研究論文は、実際にがんを発症した場合にその治療がより困難になる恐れがあることを指摘した。

 英国王立協会(British Royal Society)の学術誌「Journal of the Royal Society Interface」に発表された論文によると、新たな発見は数理モデルに基づくもので、これが統計的にまた実験室で確認されれば、大腸がん予防でのアスピリンの服用は、容認できないほど大きな代償を伴うことになると注意を促した。

 研究者らは、アスピリンの定期的な服用は、大腸がんを含め「さまざまながんの発症(リスク)を減らすことが示されている」としているが、その一方で「治療をより困難にする」恐れもあると論文には記している。

 アスピリンの日常的な微量摂取を少なくとも5年間続けると、その後のがんリスクが大幅に低減できるとした結果が、これまでに複数の研究で示されている。これらの研究は、大腸がんでは最大で半減、前立腺、咽喉、非小細胞肺がんでもその発症率を大幅に減らせるとしている。

 他方で、アスピリンのがん細胞への直接的な影響についても研究が行われている。これらの研究では、アスピリンががん細胞の分裂速度を遅らせるほか、細胞死を促進させることが明らかになっている。

 だが、アスピリンが持つこの作用については、まだその仕組みを理解するには至っておらず、またがんの転移を促進させるような側面の有無についてもよく分かっていないのが現状だ。

 アスピリンのがんへの作用に関する知識をより深めようと、米カリフォルニア大学アーバイン校(University of California at IrvineUCI)の研究者らはさらなる研究を行い、がん細胞における危険な突然変異を起こすリスクの有無を調べた。同大は、これまでにもアスピリンとがんに関する数々の研究を行っている。

 研究の結果、アスピリンには薬剤耐性のある、より攻撃的な変異細胞を生成するがんの能力を増強させる効果があることが確認できた。この結果は、がん予防におけるアスピリン使用のプロトコルに見直しを迫るものとなり得る。

 この結果を受け、ここで決定的に重要になるのは、アスピリンによって大腸がんの発症が十分に遅らされ、服用の代償であるマイナスの効果を避けられるようにすることだと研究者らは指摘した。

 また、アスピリンを定期的に服用している人は定期的にがん検診を受けるべきだとし、特に中年層への注意を促した。(c)AFP