【6月29日 AFP】皮膚がんの転移を制御するたんぱく質を特定したとする研究論文が28日、発表された。研究チームは、このたんぱく質の阻害が有効な治療法となる可能性について指摘している。

 スペイン国立がん研究センター(Spanish National Cancer Research Centre)の研究チームは、遺伝子操作により人の皮膚がんを発症させたマウス実験で、がんが体内の他の場所に転移する際に、このたんぱく質が転移を助長または抑制する主要な役割を果たしていることを突き止めた。論文は、英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された。

「ミッドカイン(MIDKINE)」と呼ばれるこのたんぱく質は、最も悪性度の高い皮膚がんであるメラノーマから分泌され、その後、マウス体内の別の場所に移動し、そこでがんが形成されたと研究チームは説明している。

 論文ではまた、皮膚がん患者のリンパ節内部に高いミッドカイン値を確認できた場合、「極めてよくない」結果の前兆ともなったことを報告している。これは、リンパ節に腫瘍細胞がない場合であっても同様だった。

 メラノーマは、早期発見が重要だ。いったん転移が始まってしまうと、患者の予後は不良となる場合が多い。

 メラノーマに関してはこれまで、原発腫瘍内とその周囲のリンパ管およびリンパ節へと少しずつ浸潤して、他の臓器に転移するプロセスが取られると考えられてきた。しかし、隣接するリンパ節の切除を行っても、転移の阻止はできなかった。つまり、転移の仕組みについての専門家らの理解に「何かが欠けていた」と研究チームは指摘する。

 今回の研究では、その答えとなり得るものが示された。マウスの腫瘍内でミッドカインが阻害されると、同様に転移も抑制されたのだ。

 研究チームは、「転移が発生するもっと前の段階での抑制を目指す診断・治療戦略の構築に向け、(今回の研究は)扉を開けることができたかもしれない」と結論付けている。(c)AFP