■古代の「ネコブーム」

 今回の詳細なDNA分析の結果によると、家畜化はその両方のおかげであると考えられるようだ。

 論文の共同執筆者で、フランス国立科学研究センター(CNRS)のエバ・マリア・ガイグル(Eva-Maria Geigl)氏はAFPの取材に、リビアヤマネコは紀元前4400年頃に「最初の農耕民が欧州に移住し始めた時期に広まり始めた」と語った。「これは(恐らく古代の交易路をたどると思われる)海路か陸路で、リビアヤマネコが人によって移動していったことを示していると考えられる」

 それから数千年後、今度は古代エジプトのファラオ王朝時代に、リビアヤマネコのエジプト変種が第2の波で欧州とその先へ拡大して「熱狂的流行」を巻き起こしたと、論文の執筆者らは指摘する。そして「エジプト種のネコの熱狂的流行は、古代のギリシャとローマの世界全体からさらにそのずっと先へと、非常に速いペースで拡大した」とした。

 エジプト種のネコはアナトリア原産の近縁種と外見が非常によく似ていたと思われることを考えると、その成功は、性格の「社交性と従順さにおける変化」が後押しした可能性が高いと推察できる。野生ネコは縄張りを単独で行動する狩猟動物で、階層的な社会構造を持たないため、家畜化の対象には適さないと考えられるのだ。

 また、イヌやウマの場合と異なり、外見目的の交配が少なくとも最初の数千年間は行われていなかったことも今回分かった。今日に至るまで、飼いネコは体の構造や機能、動きなどに関して野生の近縁種と酷似している。

 品種改良が開始された当初は、ネコの毛並みが主な対象となっていた。ぶち模様の色合いが初めて遺伝子に記録されるのは西暦500~1300年の中世だったことも明らかになっている。

 まだらのぶち模様は今日の飼いネコに多くみられるが、野生ネコには存在せずすべてしま模様だ。ガイグル氏は「ネコの『装飾的な品種』を作るための繁殖計画が始まったのはごく最近の19世紀のことだ」と指摘。そして、それらでさえも「野生ネコとそれほど違っていない」ことを説明した。(c)AFP/Mariëtte Le Roux