■タンパク質カクテル

 研究チームは、これらのいわゆる転写因子のうちの5つが共同で作用することで、さまざまに形態変化する血液幹細胞が生成されることを発見した。この血液幹細胞は、白血球、赤血球、血小板、マクロファージその他の血液を構成するあらゆる種類の細胞に分化する。

 研究チームは最終段階で、このヒト血液幹細胞を生きたマウスの骨髄に移植。数週間後、数種類のヒト血液細胞が形成され、マウスの体内を循環しているのを確認した。

 ボストン子ども病院の研究所所長で、今回の実験をデザインしたジョージ・デイリー(George Daley)氏は「今回の研究により、いわゆる『ヒト化マウス』内でヒトの血液機能をモデル化することが可能になった」と話し、「正真正銘のヒト血液細胞をペトリ皿内で生成することに、われわれは手が届きそうなほど近づいている」と続けた。

 米ワイル・コーネル医科大学(Weill Cornell Medical College)のシャヒーン・ラフィー(Shahin Rafii)氏が主導したチームによる別の研究では、成体マウスの細胞を出発物質として使用。共通する物を含む遺伝子活性化タンパク質への暴露など、数段階のプロセスを通じて誘導し、ペトリ皿内で成熟した血液幹細胞を作製した。

 今回の研究論文をめぐり、英医療研究所「Cambridge Stem Cell Institute」の研究者らは、これら2つの実験は、幹細胞開発における「画期的な進展」と指摘した。

 同研究所は、今回の研究には参加していないが、実験室内で「血液幹細胞を製造できること」により、細胞療法、薬剤のスクリーニング、白血病の発病に関する研究などに非常に大きな展望が開けると、ネイチャー誌に同時掲載された解説記事でコメントしている。(c)AFP/Marlowe HOOD