【4月13日 AFP】人類が食用植物を育てるために地面に種をまく方法を考え出すはるか前に、アリは制御された環境で「作物」を栽培していたとする研究結果が12日、発表された。

「農耕」習性のあるアリはこれまでに数十種知られている。これらのアリは、主にコロニーの幼虫の餌にする目的で地下の農場で菌類を栽培する。

 そのうちの数種のアリは、このプロセスを次の段階に進めている。栽培する菌類を、もはや野生では生きられないように全面的に改良しているというのだ。これは、人が食用として栽培する一部の遺伝子組み換え作物が、農薬など人の介入なしでは成長できないのと非常によく似ている。

 論文の筆頭執筆者で、米国立自然史博物館(National Museum of Natural History)のアリ専門家のマイケル・ブランステッター(Michael Branstetter)氏は「数百万年の間に菌類は栽培化された」と話す。

 今回の最新研究では、約3000万年前、おそらくは気候の寒冷化と乾燥化に応じて、一部のアリがより洗練された栽培の習性を獲得したことが初めて示された。

 AFPの取材にブランステッター氏は、「研究では、栽培化が南米の乾燥した生息環境で起きたことが明らかになった」と説明。また「その生息環境から、これらの菌類がアリの巣から出て、他の自生種の菌類と交配することは不可能だったと思われる」と続けた。

 湿気を好む菌類は湿度の高い森林で進化したため、環境が変化する中、独力で生き延びられるだけの性質を備えていなかったことが考えられる。

 英学術専門誌「英国王立協会紀要(Proceedings of the Royal Society B)」に発表された今回の研究は、遺伝子に関する徹底的な追跡調査が実を結んだ成果だ。

 研究チームは強力な最新ツールを使用して、約1500のDNA配列をアリの現生種119種で比較した。119種のうちの3分の2は、作物栽培を行う農耕アリだった。

 菌類を栽培する種に最も近い近縁種の非農耕アリを特定することで、研究チームは時間の流れをさかのぼる進化系統樹を構築できた。

 研究を主導した自然史博物館アリ部門のキュレーター、テッド・シュルツ(Ted Schultz)氏は「高度な農耕アリ社会は数百万年もの間、持続可能な、産業規模の農耕を実践している」と指摘した。

 乾燥した温帯気候に暮らす人々が熱帯植物を温室の中で育てるのと同じように、農耕アリは、温室管理された菌類栽培園内の湿度を注意深く維持する。「空気が少し乾燥しすぎていれば、アリは外から水を持ち込み、湿度を加える。湿気が多すぎると、逆のことをする」とシュルツ氏は説明した。(c)AFP/Marlowe HOOD