【3月16日 AFP】なぜ一部の人々の脳は、他より速く老化が進むのかを、人口の約3分の1に見いだされる高頻度の遺伝子変異で説明できる可能性があるとする研究結果が15日、発表された。

 米医学誌セル・システムズ(Cell Systems)に掲載された研究論文によると、「TMEM106B」として知られるこの遺伝子は、高齢者に通常みられる脳の老化を最大で12年速めるという。

 TMEM106B遺伝子は通常65歳前後から、特に脳の前頭葉に影響を及ぼし始める。前頭葉は、集中、計画、判断、創造といったより高度な精神機能に関与している。

 論文の共同執筆者で、米コロンビア大学メディカルセンター(Columbia University Medical Center)アルツハイマーと加齢脳に関するタウブ研究所(Taub Institute for Research on Alzheimer's Disease and the Aging Brain)のアサ・アベリオビッチ(Asa Abeliovich)教授(病理学・神経学)は「高齢者の集団を見ると、同年代の人に比べて老けて見える人もいれば、若く見える人もいる」と話す。

「TMEM106B遺伝子の『異常な』コピーを二つ持つ人の前頭葉は、さまざまな生物学的基準から見て、二つの正常なコピーを持つ人より老化が12歳進行するようだ」

 研究チームは、明らかな疾患を持たない1904人の死後解剖で得られた脳サンプルの遺伝子データを分析することで、TMEM106B遺伝子を発見した。

 65歳までは「誰もが同じ境遇にあり、その後に作動する何らかの未解明の圧力が存在する」と、アベリオビッチ教授は説明する。

「TMEM106Bの二つの正常なコピーを持っていれば、その圧力に対して良好に反応できる。だが二つの異常なコピーを持っていると、脳が速く老化するのだ」

 この他にも、アルツハイマー病発症のリスク上昇に関連性がある遺伝子変異「アポリポタンパクE(ApoE)」など、神経変性障害のリスクを上昇させる個別の遺伝子がこれまでに複数特定されている。(c)AFP