■「脅威と認識」10%増

 今回の実験では、ピストルか、または財布や携帯電話など危険性のない物を手に持っている黒人もしくは白人の男性の写真を被験者に見せた。

 被験者には、写真の人物が武器を持っていると判断したらコンピューターのキーを押してその人物を「撃つ」ように指示した。

 この実験から、心臓が1回拍動している間に人物の画像がフラッシュ表示されると、黒人男性が手に持っている物体をピストルと認識する確率が約10%高くなることが明らかになった。

 論文の共同執筆者、英ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校(Royal Holloway, University of London)のマノス・ツァキリス(Manos Tsakiris)氏は「心臓から脳に発信される信号は、人間の認識を変化させるほど強力だと思われる」と述べる。

 ツァキリス氏は、研究論文の発表に先立ち開かれた記者会見で「その信号は、目の前にある物体を誤認させる程度にまで人間の知覚を支配する場合もある」と語った。

 心臓の鼓動がより速く、より強くなる緊迫した状況では、脅威の錯覚が生じるリスクが増大する可能性があると、研究チームは注意を促している。

「社会的な固定観念や人種的な固定観念がかなりの程度までわれわれの文化に埋め込まれているように思われることは周知の事実だ」とツァキリス氏は説明する。「これらの固定観念が人間の生理機能の中にも具現化されていることを、今回の研究は示している」

 ガーフィンケル氏によると、恐れや思考に対する心拍の影響などの人体の自動作用を理解している人は、それらをより上手に制御できることが、他の研究で判明しているという。

「従って、自身の心臓の鼓動をより意識するように訓練を施すことができれば、これらの信号が及ぼす可能性のある強い負の影響を弱めることが可能になる」と、ガーフィンケル氏は述べている。(c)AFP/Mariëtte Le Roux