【12月7日 AFP】宇宙の4分の1を構成すると考えられている正体不明の「暗黒物質(ダークマター)」は、これまで考えられていたより分布密度にむらが少ないとの研究論文が7日、発表された。物理学の定説の一部を揺るがす可能性のある結果だという。

 この発見は、これまでに得られている、宇宙の誕生と成長に関するわずかな知見に疑問を投げかける可能性があると、天文学者らは指摘している。

 論文の共同執筆者で、オランダ・ライデン天文台(Leiden Observatory)のコンラト・クイケン(Konrad Kuijken)氏と研究チームは、南米チリにある欧州南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡VLT(Very Large Telescope)を用いて、遠方の銀河約1500万個の光を調べた。その結果、欧州宇宙機関(ESA)の宇宙望遠鏡プランク(Planck)がこれまでに示していたよりも、ダークマターが「塊の状態にない」ことがわかった。

 望遠鏡では見えない謎の物質ダークマターは、宇宙の他の天体に及ぼす重力を通じてのみ検知される。

 2013年に運用を終了したプランク望遠鏡は、約140億年前に宇宙を創造した大爆発「ビッグバン(Big Bang)」による放射の名残を調査した。

 今回の最新研究では、遠方の銀河からの光が、物質の重力による影響でどのように曲げられるかを調べた。

 英王立天文学会(RAS)とESOは声明を発表し、「プランク望遠鏡によって確立された結果と(比較して)、これほどの相違がみられることは、宇宙の成り立ちの基本的な側面の一部に関する天文学的な理解を組み立て直す必要があるかもしれないことを意味している」と述べた。

 この結果は、宇宙膨張の加速に関与すると考えられている正体不明の力、ダークエネルギーの本質に関して再考が必要であることを意味している可能性もある。

 クイケン氏は、理論物理学者アルバート・アインシュタイン(Albert Einstein)が示唆した単一の「宇宙定数」ではなく、いくつかの異なる形態のダークエネルギーが存在する可能性があると指摘した。

 そして、「もう一つの心躍る可能性は、これが、宇宙規模での重力の法則が一般相対性理論と異なっていることを示すサインとなり得ることだ」とクイケン氏は続けた。一般相対性理論は、今日の物理学の大半の根拠となっているアインシュタインの重力理論だ。

 今回の研究成果は「英国王立天文学会月報(Monthly Notices of the Royal Astronomical Society)」に発表された。(c)AFP