【9月1日 AFP】実験薬を用いた初期の臨床試験で、軽度アルツハイマー病患者の脳内にみられるタンパク質の蓄積を除去し、知的機能低下の進行を減速させる効果が認められた。研究論文が8月31日、発表された。

 英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された今回の成果により、記憶と自立を奪うこの病気に対する治療法の開発がようやく実現可能になるとの期待が高まった。

 ただ、専門家らは、過度に期待には注意が必要とくぎを刺す。研究チームによると、この薬剤「アデュカヌマブ(aducanumab)」は、初期の第1相臨床試験で有望な結果を示した最新の抗体だが、これまでのその他の抗体は、決定的に重要な第3相の有効性試験で期待外れの結果に終わっているというのだ。

 米国とスイスの研究チームは、米バイオ製薬バイオジェンが開発したアデュカヌマブについて、初期のアルツハイマー病患者165人を対象とする1年間の臨床試験を実施した。

 一部の患者には、この抗体を月1回の頻度で接種し、他の患者にはプラセボ(偽薬)を与えた。

 抗体を投与した患者の脳内では、アミロイド斑(プラーク)と呼ばれるタンパク質の蓄積が「ほぼ完全に除去」されたと、研究チームは報告している。

 アミロイドは粘着性のタンパク質で、凝集して沈着物を形成する。これは、アルツハイマー病を引き起こすメカニズムの一つと考えられている。

 論文の共同執筆者で、スイス・チューリヒ大学(University of Zurich)再生医療研究所(Institute for Regenerative Medicine)のロジャー・ニッチ(Roger Nitsch)教授は「この抗体の効果は、非常に目覚ましい」と述べた。