【8月7日 AFP】サーモン養殖で世界第2位の南米チリの養殖業界が、環境を汚染し、新たな薬剤耐性菌「スーパーバクテリア」を生み出す恐れのある抗生物質の大量使用をやめようとしている。

 サーモン養殖世界1位のノルウェーとの厳しい競争に直面する中、チリのサーモン養殖業者、医薬品グループ、水産加工業者は今週、論争となっている抗生物質の大量使用という悪習をやめるプログラムを開始した。

 ノルウェーはチリに比べてわずかな量の抗生物質しか使用していない。環境保護団体「オセアナ・チリ(Oceana-Chili)」によれば、チリの抗生物質の使用量はノルウェーの500倍だという。

 近年、チリ沿岸の海には、ピシリケッチア症(SRS)というサーモンの病気の原因となる「ピシリケッチア・サルモニス」というバクテリアが大量に存在している。SRSにかかったサーモンの身には鮮やかなピンクのただれが生じる。

 昨年チリの養殖場で病死したサーモンのうち約80%の死因がSRSだった。これまでのところ効果的なワクチンや治療法が見つかっていないため、抗生物質の使用がまん延している。しかし、抗生物質の使用によってつきまとうようになった悪いイメージを、チリの養殖業界は今、拭い去りたいと考えている。

 抗生物質の使用を削減するための新プログラムは、チリの伝承に登場する男の海の精霊の名を取り「ピンコイ(Pincoy)」と命名された。プログラム発表の際の共同声明は「抗生物質の使用の大幅削減に共同で取り組んでいくために、具体策を実施しなければならないことをチリ産業界は確信している」と述べている。(c)AFP/Paulina ABRAMOVICH