【7月22日 AFP】中国と地中海を結ぶ古代シルクロード(Silk Road)を行き来した商人たちは、金や織物、香辛料、茶といった商品だけでなく、腸管寄生虫も運んだとする研究論文が22日、発表された。

 東アジアと中東、欧州を結ぶシルクロードをめぐっては、腺ペストやハンセン病、炭疽を含む、感染症がまん延する一因になったとの仮説がこれまでもあったが、具体的な考古学的証拠が不十分だった。

 今回の研究では、当時シルクロード沿いにあったトイレの内容物を調べ、2000年前の商人たちが実際にこれに関わっていたことを示す証拠が見つかった。

 英国と中国の共同研究チームは、中国北西部にあるシルクロードの中継地、敦煌(Dunhuang)懸泉置(Xuanquanzhi)で1992年に見つかった「排泄物」を調べた。「排泄物」は、現代のトイレットペーパーにあたる、布でくるまれた木と竹の棒に付着していたものだった。

 考古学誌「ジャーナル・オブ・アーキオロジカル・サイエンス(Journal of Archaeological Science)」に掲載された論文によると、研究チームは、紀元前111年の漢王朝時代に設置され、西暦109年まで使用されていたとみられる当時のトイレからサンプル7件を採取。これらのサンプルから、回虫、鞭(べん)虫、条虫、肝吸虫の4種類の寄生虫の卵を検出した。

 このうち、腹痛や下痢、黄疸、肝臓がんなどの原因となる肝吸虫は、湿り気の多い場所でしか生息できないが、これが砂漠の端に位置する乾燥地域の敦煌で発見されたのだ。

 英ケンブリッジ大学(University of Cambridge)は声明を発表し、「敦煌(懸泉置)のトイレに最も近い肝吸虫(症)の流行地域は、現在の発生率でみると、約1500キロ離れている。また肝吸虫は、敦煌から約2000キロ離れた広東省(Guandong Province)に最も多くみられる寄生虫だ」と述べた。

 論文の共同執筆者であるピアース・ミッチェル(Piers Mitchell)氏は、懸泉置のトイレで肝吸虫が発見されたことから、当時、この寄生虫の流行地域から商人が旅をしてきたことが推測できるとしながら、「シルクロードを行き来した彼らが、過去に沿道地域に感染症をまん延させた要因となったことが初めて証明された」と指摘している。(c)AFP