【7月1日 AFP】米国防総省は6月30日、トランスジェンダー(性別越境者)の兵士らが自身の性自認を隠すことなく軍務に就くことを認めると発表した。米軍にとって大きな方針転換となった。

 アシュトン・カーター(Ashton Carter)米国防長官は記者会見で、トランスジェンダーの兵士らに対する禁止規定の解除は「正しいことであり、最も高い能力を持つ人々を採用し長く活躍してもらうことを確実にするための新たな一歩だ」と述べた。

 米軍は5年前まで、いわゆる「聞くな、言うな(Don't Ask, Don't Tell)」方針の下、同性愛の兵士らが自らの性的指向について公言することも禁止していた。

 トランスジェンダーをめぐるこの新方針は1年をかけて段階的に実行に移していくが、即時発効し、今後は兵士らの性自認だけを理由に除隊したり再入隊を拒否したりすることはできない。またすでに軍務に就いているトランスジェンダーの兵士らは、トランスジェンダーであることを隠さずに任務に当たることができる。

 さらに来年7月1日までには、身体的・精神的な必要基準を満たしたトランスジェンダーの人の新規採用も開始するという。

 この新方針の下、トランスジェンダーであることに関連した医療費についても同省が負担する。性別適合手術が「医学的に必要」と認められた場合は、その手術費用についても同省が支払うという。カーター長官は、トランスジェンダーに関連する医療費負担の開始時期について、遅くとも今年10月1日までに支払いを開始すると明言した。

 米軍に所属する兵士の数は約130万人。非営利団体(NPO)ランド研究所(RAND Corporation)の調査によると、すでに軍務に就いている兵士のうち約2500人がトランスジェンダーで、約82万5000人いる予備軍にも1500人程度いるとされる。

 世界全体では、英国、イスラエル、オーストラリアなど少なくとも18か国がすでにトランスジェンダーの人がオープンに軍務に就くことを認めている。カーター長官は昨年、戦闘任務を含め、軍の全職種に女性の配属を認める方針も発表している。(c)AFP