■ゴーストタウンからゴーストタウンへ

 オルビタの変遷は、チェルノブイリと密接に絡み合っている。

 オルビタの開発計画は、建設が予定されていたチヒリン(Chygyryn)原発のために、1970年に立案された。チェルノブイリ原発の技術者たちが住んだ町プリピャチ(Pripyat)と同様の機能を果たすことが期待され、1980年代に9階建てアパート2棟、5階建てアパート2棟と、インフラや百貨店も建設された。しかしチェルノブイリ事故後、チヒリン原発建設計画は即座に破棄され、町もたちまち見捨てられた。

 リマルチェンコさんは「ここはチェルノブイリと似ている。放射能がないことを除いて。代わりに美しい森と空気がある」と話す。

 オルビタでは現在、5階建てアパート2棟に約50家族が居住している。住人のほとんどが高齢者で、暖房設備やガスなしで生活している。近隣の村まで行かなければ水は手に入らない。生活の糧はわずかな年金と庭で育てた野菜だ。だが、彼らをいっそう悩ませているのは、奇妙な町とその住人の写真を撮ろうとやって来る、好奇心旺盛な観光客の存在だ。

 19歳の学生、クリスティーナさんは、スロバキア国境に近いウクライナ西部の町ウージュホロド(Uzhgorod)から友人らと、スリルを求めてオルビタにやって来た。「チェルノブイリに行きたかったけれど、値段が高かった。ここは無料だし、放射線もない」と話す彼女は「このゴーストタウンの雰囲気に引かれた」ことを認める。「世界の終末を描いた映画の中にいるみたい」

 だが、リマルチェンコさんは「私たちが幽霊みたいだと言いたいのか?」と苦い表情。「本物のゴーストタウンならば、われわれが逃げてきた東部の親ロシア派地域にある」とつぶやいた。(c)AFP/Yulia SILINA