【2月25日 AFP】オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)などの研究チームが24日、宇宙のはるかかなたで瞬間的に強力な電波が爆発的に放射される謎の現象「高速電波バースト(FRB)」の一つが、地球から約60億光年の距離にある銀河から発せられたことを世界で初めて突き止めたと発表した。高速電波バーストについては、天文学者らは9年間にわたって、その発生源の特定に取り組んできた。研究論文は、英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された。

 人の目には見えないフラッシュ現象である高速電波バースト。ほんの一瞬の現象だが、1000分の1秒間に放射するエネルギー量は、太陽放射の約1万年分に匹敵する。ただその発生原因は、まだ科学的に解明されていない。

 CSIROのサイモン・ジョンストン(Simon Johnston)氏は「今回の発見で、何がこのバースト現象を引き起こしているのかを解明するための道が開ける」と話す。

 2007年に発見された高速電波バースト現象は、これまでに17回しか観測されていないが、日々1万回以上は発生していると考えられている。

 一部では、宇宙人からの信号なのではとの仮説が提唱されていたが、世界最大級の電波望遠鏡建設計画を推進するスクエア・キロメートル・アレイ機構(Square Kilometre Array Organisation)のエバン・キーン(Evan Keane)氏は、これをきっぱりと否定。「それはないね、悪いけど」と述べた。同氏は、今回の研究論文の主執筆者だ。

 2015年4月18日に観測された高速電波バーストに関してキーン氏は、より可能性の高い発生源として、超高密度の中性子星2個の衝突が考えられると指摘している。

 今回のバースト現象は、豪州東部にあるCSIROのパークス(Parkes)電波望遠鏡で検出された。これを受けて、他の望遠鏡での観測が促され、数時間以内に、CSIROのコンパクト電波干渉計(Compact Array)で高速電波バーストの「残光」が検出された。

 その後、米ハワイ(Hawaii)州にある日本の光学望遠鏡「すばる望遠鏡(Subaru Telescope)」を用いて、約6日間続いたこの残光がどこから来ているかが調べられた。

 キーン氏は、AFPの取材に「こうすることで、単体望遠鏡の1000倍のズーム倍率で観測対象をとらえることができた」と語っている。

 高速電波バーストの発生源として特定された銀河は楕円(だえん)銀河で、太陽系がある天の川銀河(Milky Way)のような渦巻型ではない。直径は約7万光年で、太陽サイズの恒星約1000億個分に相当する質量を持つ。