■ゼリーのような揺れ

 アインシュタインは自身が提唱した一般相対性理論の中で、時空は物体の重さでたわんでいるネット(網)に例えることができると述べている。重力波は、池に小石を投げ入れた時にできる波紋のようなものと考えられる。

 重力波の存在については、すでに数学的に予測されていたが、これまで直接的に観測されたことは一度もなかった。

 新型LIGOチームを率いる米マサチューセッツ工科大学(MIT)のデービッド・シューメーカー(David Shoemaker)氏によると、重力波の波形はまさに物理学者らが予測した通りだったという。

 シューメーカー氏は、AFPの取材に「1916年のアインシュタインの理論に基づいて算出される波形は、2015年の観測結果とぴったり一致する」と語った。「それはチャープ信号(鳥の甲高いさえずり)に似ていた。われわれの言う低周波である20~30ヘルツ──ベースギターの最も低い音程度──から始まり、そこからほんの一瞬で150ヘルツくらいに急激に高まった。ピアノの鍵盤中央のドの音に近い」

 また、この信号は「2個のブラックホールの軌道がどんどん小さくなり、速度がどんどん速くなって、ついに2個が結合して1個の天体になるのに対応していた」と説明し、「そして、この波形の最後では、最終的に形成されたブラックホールが、定常状態に至る間にまるでゼリーでできているかのように揺れる様子が確認できる」と付け加えた。

 物理学者らによると、グリニッジ標準時(GMT)2015年9月14日16時51分(日本時間9月15日午前1時51分)に検出された重力波は、南天のどこかにあった2個のブラックホールが融合するまでの最後の瞬間に発せられたのだという。ただ、ブラックホールの位置を正確に特定することは不可能としている。

 MITと米カリフォルニア工科大学(Caltech)による分析の結果、2個のブラックホールが約13億年前に結合したことと、その質量が太陽の29~36倍であることが分かっている。