■「恐怖の空気」

 事件が起きるたび、ストレッチャーで搬送される死傷者や、泣き崩れる遺族、殺害犯の写真、暗い表情を浮かべた当局者の映像が、ニュースチャンネルなどでひっきりなしに流れる。シュライバー教授は、こうした映像を長時間見ると、大人も子どもも不安を覚えることを示す科学的証拠が上がってきていると説明する。専門家らによると、こうした不安は「過覚醒」というパラノイア(妄想症)に近い持続的な警戒状態を招く。

 カリフォルニア州ロサンゼルス(Los Angeles)の心理学者、エリック・ベルゲマン(Eric Bergemann)氏は、暴力が繰り返されると恐怖が長く続き、他者との間で不和が生じる恐れがあるとも指摘する。

■「殺傷事件に備えた訓練」

 多くの企業で、従業員は無差別殺傷事件が起きた際に従うべき手順を指導されている。ロサンゼルスのあるオフィスビルでは、走るか、隠れるか、戦うかの3つの選択肢があるという保安官事務所からの通報が頻繁に流れる。

 多くの学校では「殺傷事件に備えた訓練」が行われ、子どもたちは銃撃犯が校内に現れた時に身を隠す方法を身につける。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校セメル神経科学・ヒト行動学研究所(UCLA Semel Institute for Neuroscience and Human Behavior)の臨床心理学者、キャサリン・モギル(Catherine Mogil)氏は、「こうやって育った子どもたちにとっては地震に備えた避難訓練のようなもの。少し悲しいけれど」と話す。また、「この世代の子どもたちは不安が高まったり、過剰に警戒したりする恐れがある」と危惧する。

 オレゴン(Oregon)州ローズバーグ(Roseberg)では3か月前、精神的に不安定な学生が助教1人と学生8人をライフル銃で殺害する事件が起きた。

 地元の消防幹部はAFPに「コミュニティー全体が緊張状態にある。子どもたちも影響を受けている」と説明。「忍耐力が著しく落ちている人や気分の浮き沈みが激しい人もいる」と話し、ある種の言葉を聞いただけで恐怖を感じる状況で、こうした精神状態から完全に回復する人はいないだろうと悲観した。(c)AFP/Veronique DUPONT