【1月4日 AFP】夏季五輪が今年開催されるブラジル・リオデジャネイロ(Rio de Janeiro)で、汚染が進んだグアナバラ湾(Guanabara Bay)。この湾に浮かぶ小島に放置された石油関連施設やごみの山の中をかき分けるようにして進みながら、生態学者のセルジオ・リカルド(Sergio Ricardo)氏(47)は思いがけない言葉を発した。「奇跡だね」

 奇跡が起こるとしても遠い先だろう。だが、リカルド氏や活動家たちの努力が結実すれば、この小さな無人島、セカ(Seca)島は、世界有数の風光明媚(めいび)な湾を破滅から救う、壮大な努力の礎となるはずだ。

 米石油会社テキサコ(Texaco)の石油備蓄基地だったこの島は、半世紀前に同社が撤退して以来、放置され、荒れ放題になっている。自然を愛するリカルド氏はこの島に展望施設を設置し、「海辺のエデンの園」に生まれ変わらせたいと考えている。今は巨大な排水のたまり場と化した石油基地の廃虚に、大きな海水タンクをいくつも持ち込んで魚を育て、湾に戻す。リオデジャネイロの大学がこぞって研究を行い、熟練の漁師らにその技術を伝授してもらう。グアナバラ湾をリオ市民の憩いの場にする──。

 非政府組織(NGO)の代表たちや支援者らと共に同島を視察に訪れたリカルド氏はこう語った。「政府は、グアナバラ湾は死に絶えた、産業用に明け渡すしかないの一点張り。だが我々は、その真逆を証明することを目指している」

■無限に膨らむ夢

 足首が埋まる高さまで積もったポリ袋、壊れたおもちゃ、無数のボトル類、車や家具の一部──環境活動家らがグアナバラ湾の絶望的破壊と形容する光景を反映しているのが、セカ島の浜辺だ。

 視察団の先頭に立ち、茂った葉をかき分け、幽霊でも出そうな廃虚をよじ登りながらリカルド氏は、これから島を待ち受けている、自らが思い描く「奇跡」を説明し始めた。「一番大きい魚のタンクはここへ置いて」と指さした先は、半世紀放置された木々が黒々と生い茂った、塀で仕切られた場所。「その中で何千、何万という魚を育てることができる」

「あの建物は漁師の寮になりそうだね。それか、子どもたちの学校かな」と喜々として指さしたのは、屋根もなく壁が残った廃虚だ。前の扉を大木が突き抜け、熱帯の緑に圧倒されている。こちらには救急隊の詰め所、あちらには案内施設を置いて、シーフードレストランは向こうへ……。リカルド氏の楽観的な目には、可能性が無限に映るようだ。