■「バンバン」と呼ぶな

 銃規制に反対する主要ロビー団体の全米ライフル協会(National Rifle AssociationNRA)は、銃社会に関する専門家の批判には耳を傾けず、さらには銃についての子どもの教育方法に関する助言を行ってすらいる。

 NRAのウェブサイトに掲載されたビデオの中で、「NRAママ」ことジュリー・ゴロブ(Julie Golob)氏は「わが家では銃のことはきちんと銃と呼んでいます。バンバンでも、ブンブンでも、ポーポーでもありません」と、笑顔で説明。また、子どもが混同する恐れがあるため、銃器に形が似た玩具は買わないようアドバイスしている。

 家庭に少なくとも銃器1丁がある米国の子どもは、全体の3分の1。さらに、これらの子どものうち200万人の家庭では、安全対策がなされていない状態の銃器が身近にあると、銃による暴力の削減を目指す団体「エブリタウン・フォー・ガン・セーフティー(Everytown for Gun Safety)」は指摘している。

 また、別の調査によると、子どもたちの3分の2が、たとえ絶対に知られていないと親が思っていても、銃器の保管場所や隠し場所を正確に把握しているという。

 だが、銃の管理と安全対策の在り方は問題のごく一部に過ぎない。事故が至るところで起こるのは、銃が至るところにあるからだ。

 米国では民間人が保有する銃器の数は、同国人口(約3億2000万人)とほぼ同じ。また、米国では幼い子どもが実弾射撃をするのは珍しいことではない。だが、射撃時には反動の危険性があり、それがどの程度の威力を持つのか、子どもは自覚していないことが多い。

 昨年8月、アリゾナ(Arizona)州の射撃練習場でインストラクターを誤射して死亡させた9歳の少女は、短機関銃「ウージー(Uzi)」を撃った時の反動にうまく対処できなかったとみられる。

 その4か月後にはアイダホ(Aidaho)州のスーパー、ウォルマート(Wal-Mart)で、2歳の男児が母親のバッグに入っていた銃をつかんだことで弾が発射され、母親がそれに当たって死亡するという惨事があった。このバッグは、銃が携帯できるよう特別にデザインされたものだった。