【6月22日 AFP】南シナ海に浮かぶ個人所有の島。実業家のリン・ドンさんは、夕陽が海にとけていくこの時間帯にハンモックに揺られて、浜辺に打ち寄せる波の音に耳を傾けるのが好きだ。「うるさいのは好きじゃないし、混み合った都会の公害にもうんざりだ」とリンさんは話す。「島の暮らしのほうが、よっぽど僕には向いているよ」。リンさんは医療機器会社を開業し財を成した富豪だ。

 中国では自分の島を所有する富豪が、少数ながら増えつつある。痩せた体に白髪が混じる髭をたくわえた42歳のリンさんは、中国政府の土地所有制限が、果樹の立ち並ぶ彼の楽園に及ぼす影響が不安なので「島の開発に投資する気にはならない。ここに何かを建てても、政府に取り壊される可能性があるから」とAFPに語った。

 リンさんの推定によると現在、中国にはこのような島の所有者が約600人存在する。多くは観光や漁業開発を計画する企業だが、中には友人や役人を接待するためにプライベートのクラブハウスを建設する人もいるという。

 そんな中で、リンさんは自分の楽しみのためだけに島を購入したエリートの一人だ。また彼は、中国で初めて、島所有者の協会を創設した人物でもある。協会の会員は「自然と海を愛し、ビーチに寝転んで音楽を聴くのが好きな人々」だとリンさんはいう。

 41歳の弁護士ワン・ユエ(Wang Yue)さんは、岸から約40キロ離れた沖合に浮かぶ広さ1キロ平方メートルの無人島から、中国の商業的中心地・上海(Shanghai)まで通勤する。「島では、夜空に満天の星が見え、東から月が昇るのも見える。素晴らしい気分だ」と話す。

 ワンさんは数週間前、出身地の広東(Guangdong)省で、スポーツカーやヨット、個人所有のヘリコプターなどぜいたく品が並ぶ見本市の中で国内2番目の規模を誇る「中国島所有者フォーラム(Chinese Island Owners Forum)」を開催した。出席したパネリストの背後には、小さな人口海岸と、ビキニの上下に翼を着けて並ぶモデルたちの姿。フォーラムの司会者は高々と「自分だけの王国を持つ夢は、私たち全員の心の中にある。美しい島を所有しよう」と宣言した。

 中国は1万4500キロの海岸線を有し、面積500平方メートルを超える国有の島が7300島ある。その中には、南シナ海(South China Sea)で他国と領有権が争われている島々の多くが含まれる。中国は領土的野心を誇示するため、そのサンゴ礁上に人工島を建設中だ。