【5月13日 AFP】人間の遺伝子の4分の1近くは、活性化の程度が季節によって変化するとの研究結果が12日、発表された。夏より冬に病気にかかりやすい理由はこれで説明できる可能性があるという。

 英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された論文によると、人間の遺伝情報が季節の影響を受ける度合いの大きさに研究チームは驚いたという。

 分析対象の遺伝子2万2822個のうち、季節によって活性化レベルが上昇または低下する遺伝子は5136個あった。だがすべて同様ではなく、活性化レベルが冬に高くなるものもあれば、夏に高くなるものもあった。

 今回の結果を受け、研究チームは、人間の免疫系が「季節性」によって繊細に影響を受ける数多くの生体内機構の一つかもしれないと指摘した。

 研究を率いた英ケンブリッジ大学(University of Cambridge)のジョン・トッド(John Todd)教授(遺伝医学)は今回の発見について「実に意外」であると同時に「分かっていたこと」でもあると表現した。

 この発見について同教授は、心臓病から精神疾患に至るまでの非常に多くの病気が冬季に悪化する理由を説明する一助となるとしながら、「だが、これが実際に起きる程度については、これまで誰も正しく評価していなかった」と述べ、また「(季節性があるとされる)1型糖尿病などの病気をどのように治療するか、そして(季節性に関する)調査研究の予定を立てる上で、意味深い示唆となるかもしれない」と続けた。

 研究では、北半球と南半球、赤道アフリカ地域に住む計1万6000人から提供された血液サンプルと脂肪組織を詳しく調べた。

 その結果、脂肪組織の遺伝子数千個の活性(発現)は、サンプルを採取した時期に応じて変化することが分かった。また血液細胞の種類にも、季節による変化がみられた。

 研究ではさらに、「季節性遺伝子」の発現レベルについて、北半球と南半球で採取したサンプルでは相反する傾向を示すことが確認された。

 季節差は、アイスランドのサンプル提供者の間で最も顕著だった。同国では、夏には昼の明るさが、冬には夜の暗さがそれぞれ24時間近く続く。

 季節の区切りがそれほど明確ではない赤道地域の人々から採取したサンプルでも、変化はみられたが、その度合いは他に比べてはるかに小さかった。

 西アフリカのガンビアで採取したサンプルでは、血液に含まれる免疫細胞の遺伝子が、マラリアなどの蚊を媒介とする病気が増える6月~10月の雨期の期間に高い活性を示した。

 また、炎症に関与するARNTLと呼ばれる遺伝子についても、季節的な影響を受けることを研究チームは発見した。体の防御反応である炎症は、自己免疫疾患にも関係するとされている。

 さらに、ワクチン接種は夏より冬に行うのが効果的である可能性があることも分かった。免疫系で重要な役割を担う一連の遺伝子は、冬の方が強い反応を示す状態になるからだ。

 今回の成果を通じて、心身の健康に日光や気温がどのように影響する可能性があるかに関する理解が深まることを研究チームは期待している。

 最近では、夜間シフトや時差ぼけが工場労働者や長距離飛行の航空機搭乗員に悪影響を及ぼすことを示唆する研究が数多く発表されており、いわゆる「体内時計」にも注目が集まっている。(c)AFP