■制裁を無効化、製造業を揺るがす

 3Dプリント技術は外交政策をも変えるだろう。例えば、制裁の効力を弱めてしまうかもしれない。「米国は戦闘機の部品から石油関連の機器まで何でも制裁の対象とするが、10年以上にわたって外交政策の要であってきたその『制裁』が、3Dプリント技術によって時代遅れになりうる」とシンガー氏はいう。

 一方、兵器製造の敷居が低くなることで恐ろしい可能性も生じる。「中東の爆弾製造者が日用品そっくりに見える新しい爆弾を設計したり、一匹狼的な実行犯がプラスチック銃をプリンターで製造し、ホワイトハウス(White House)の警備をすり抜けるといった可能性」をチャウソフスキー氏は危惧する。

 しかしこれらすべては、3Dプリント技術が経済に革命をもたらすことで生じ得るセキュリティ・リスクに比べれば、大したことはないかもしれない。誰もがプリンターで商品を作ることができてしまえば、衣料品や玩具などの製造を安価な工場労働に依存している経済は、深刻な問題に直面することになるだろう。チャウソフスキー氏は、「3Dプリント技術がどんなところに大きな脅威を与えているのかを知りたければ、中国がどれだけ低コストの商品化分野に頼っているかを考えればよい」と語った。(c)AFP/Eric Randolph