ミニーさんのチームはシャベルや高圧水噴射器で、表面にカビが生えたファットバーグを崩しながら進んでいく。シャベルが振り下ろされるたび、油の塊の下から汚水があふれ出し、硫化水素の強い悪臭が広がる。この臭いは体に最大2週間も染みついて消えないという。

 1860年代にさかのぼるロンドンの下水道での作業には、ユーモアのセンスと献身が求められる。「他の人が見ることのないロンドンの地下を覗けるというのは、ユニークな体験だよ」と、作業員になって7年目のティム・ヘンダーソンさん(39)は教えてくれた。「ロンドンの地下にあるもう1つのロンドンだ。技術上の偉業さ。幾つかの下水道は、実に美しい。あのレンガの積み方には驚くばかりだよ」

■除去費用は毎月1.8億円

 テムズ・ウォーターによると、ファットバーグが原因の下水管の詰まりは毎年8万件ほど発生し、除去費用は毎月100万ポンド(約1億8000万円)にも上っている。また、約7000人の顧客が自宅で下水の逆流による浸水被害に遭っているという。

「市民や企業・事業者が協力してくれれば、素晴らしいんだが。そうすれば(ファットバーグ除去に費やしている)資金をもっと良いことに使えるようになるだろう」とミニーさんは話し、食用油を排水溝に流さないよう人々に注意を促した。

「視界に入らないから皆、何も考えない。だが、かわいそうなことに誰かがその問題に対応しているんだ。しかも、クリスマスの時期には状況が悪化する。(油は)ゴミ箱に捨てて、詰まらせるな。それが答えだよ」(c)AFP