【11月24日 AFP】心臓病など多岐にわたる健康上の問題に関連するとして長きにわたり悪者扱いされてきた飽和脂肪だが、摂取量を2倍~3倍近くにしても、その血中濃度は上昇しないことを明らかにしたとする研究論文が、21日の米オンライン科学誌プロスワン(PLOS ONE)で発表された。

 一方、炭水化物については、糖尿病と心臓病のリスク増に関連がある脂肪酸の血中濃度上昇に関係していることが、同じ研究で示された。

 論文の主執筆者、米オハイオ州立大学(Ohio State University)のジェフ・ボレック(Jeff Volek)氏は、論文の中で「ポイントは、摂取する飽和脂肪は必ずしも体内にセーブ(蓄積)されないこと、そして、脂肪に関してセーブ(調節)すべきの主要な因子は、食事に含まれる炭水化物だということだ」と語っている。

 研究チームは今回の研究で、実験に参加した16人に対し、4か月半の厳しい食事管理を行った。食事の内容は3週ごとに変更され、含まれる炭水化物、総脂質、飽和脂肪が調整された。

 その結果、食事中の炭水化物を減らして飽和脂肪を増やした場合、血液中の飽和脂肪の総量は増加しなかった。それどころか大半の参加者で血中の飽和脂肪が低下していたことを研究チームは確認した。

 論文によると、炭水化物の少ない食事を与えると、体内の「パルミトレイン酸」と呼ばれる脂肪酸が低下したとされ、これは炭水化物の再導入で徐々に増加したという。パルミトレイン酸について研究チームは、「病気を促進する恐れがある、健康に有害な炭水化物の代謝」に関係するものとしている。

 このパルミトレイン酸の増加は、炭水化物が体内で燃焼されずに脂肪に変換される割合が増加していることを示していると研究チームは指摘する。

「炭水化物が非常に少ない食事を摂取すると、体は飽和脂肪を優先的に燃焼させる」とボレック氏は説明。「今回の研究に参加する以前に比べて約2倍の飽和脂肪を参加者に摂取させたが、血液中の飽和脂肪の量を測定すると、大半の参加者では低下していた」とした。

 また今回の成果は「飽和脂肪を悪者扱いしてきた通説に異を唱えるもので、食事に含まれる飽和脂肪と病気が相互的に関連してないことの知見を拡大するものだ」と付け加えている。

 参加者は実験終了までに、血糖、インスリン、血圧に「著しい改善」がみられ、体重も平均で10キロ減少したという。

「飽和脂肪に関する誤解が広く流布している。集団調査では、食事の飽和脂肪と心臓病との関連性は明らかに存在しない。それでも、食事指針は飽和脂肪の制限を推奨し続けている。これは科学的ではないし、賢明でもない」とボレック氏は話している。(c)AFP