【7月10日 AFP】ハチの個体数減少への関与が疑われている「ネオニコチノイド系」殺虫剤について、9日の英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された論文では、餌となる昆虫を殺し、鳥の個体群にも悪影響を及ぼしている可能性が指摘された。

 オランダのラドバウド・ナイメーヘン大学(Radboud University Nijmegen)のカスパル・ホールマン(Caspar Hallmann)氏率いる研究チームは、ネオニコチノイド系化学殺虫剤の「イミダクロプリド」が河川や池・湖などの地表水に高濃度で含まれる同国内の地域を調査した。その結果、これら地域に生息する鳥15種の個体数が、殺虫剤濃度が低い地域に比べて、毎年3.5%の割合で急速に減少していることが分かった。

 この個体数減少が観察された2003年~2010年までの8年間は、イミダクロプリドの使用が増加した時期と一致すると論文は指摘している。

 オランダでは1994年にネオニコチノイド系殺虫剤の使用が認可された。公式発表の数字によると、年間の使用量は2004年までに9倍以上増えたという。また、この種の化学殺虫剤の多くは、過剰な濃度で散布されていることもこれまでに明らかになっている。

 論文の執筆者らは、ネオニコチノイド系殺虫剤が繁殖期に不可欠な食物源となる昆虫を殺すことで、鳥の繁殖能力に悪影響を及ぼしていると示唆。一方で、他の原因も排除できないとも指摘した。

 観察対象となった鳥15種のうち、9種は昆虫しか食べない種類だった。

 論文は、「ネオニコチノイド系殺虫剤が自然環境に与える影響は、これまでに報告されているよりもはるかに大きいことを、われわれの研究結果は示している」とし、また「将来の法規制は、ネオニコチノイド系殺虫剤が生態系に与える可能性のある雪だるま式の影響も考慮に入れるべきだ」と述べている。

 ネオニコチノイド系殺虫剤は、耕地作物の種子処理剤として広く使用されている。成長中の苗に吸収され、農作物を食害する虫の神経系に対して毒性を示すように作られている。

 英サセックス大学(University of Sussex)の生物学者、デーブ・ゴールソン(Dave Goulson)氏は、ネイチャー誌に掲載された解説の中で、ネオニコチノイド系殺虫剤には昆虫の個体群に長期的な影響を及ぼす可能性があると述べている。

 さらに、実際に作物に吸収される殺虫剤の有効成分が全体の5%ほどにすぎないと指摘。残りの多くは、土壌と土壌中の水分に入り込み、数か月間~数年間にわたり残存する場合があるとした。

 濃度が半減するまでには1000日以上かかることもあるとされ、殺虫剤を毎シーズンもしくは毎年1回散布すると、殺虫剤の化学物質が時間の経過とともに蓄積されることになると説明している。

 また、化学物質が低木や後続作物の根に吸い上げられたり、土壌から洗い流されて湖や用水路、河川などに流入し、鳥や魚が餌にしている水生昆虫に悪影響を及ぼしたりする可能性もあるとゴールソン氏は述べている。(c)AFP