【6月18日 AFP】2013年3月の発生以来、約100人の死者を出しているH7N9型鳥インフルエンザが、中国に続いてアジアの5か国で発生する恐れがあるとした研究論文が17日、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に発表された。

 ベルギー・ブリュッセル自由大学(Free University of Brussels)などの国際研究チームによると、バングラデシュ、インド、インドネシア、フィリピン、ベトナムの5か国の一部地域では、生きた鳥を扱う市場が人口密集地に存在するため、中国と同様に鳥インフルエンザ発生の危険性があるという。

 感染の危険が高い地域として挙げられているのは、H7N9型の発生がまだ報告されていない中国東部・南東部の沿岸都市の中心部、バングラデシュとインドのベンガル(Bengal)地方の一部地域、ベトナムの紅河デルタ(Red River Delta)とメコンデルタ(Mekong Delta)、インドネシアとフィリピンの隔絶した地域など。

 論文には、H7N9型が突発的に発生する恐れのある地域を監視機関が特定できるようにするために作られた地図が掲載されている。

 H7N9型はH5N1型に続き、近年に生鳥市場を介して発生した2番目の鳥ウイルス。生鳥市場は、販売業者や買い物客が感染したニワトリやアヒルに接触する場となっている。

 H5N1型はH7N9型に比べて、人間に対する危険度ははるかに高いが、感染した家禽(かきん)類は通常その兆候を示すため、鳥を介した拡散は容易に検知できる。一方でH7N9型は、鳥に疾病の兆候が現れない場合がある。

「中国の中部と南部で報告されているH7N9型の感染がゆっくりと地域を拡大していることは、著しく厳重な管理の取り組みがなされているにもかかわらず、家禽市場のネットワークに沿ってH7N9型を封じ込めるのは困難であることを示している」と論文は警告している。

 H7N9型は「これまでに報告されている人間の症例によって示される分布を超えて拡散する可能性がある」という。

 今回の研究は、ブリュッセル自由大の他、ケニア・国際家畜研究所(International Livestock Research InstituteILRI)、英オックスフォード大学(Oxford University)、中国疾病予防抑制センター(Chinese Centre for Disease Control and Prevention)の科学者らが主導した。

 研究チームは、鶏肉の生産が盛んな中国北東部の調査で得られた証拠から判断して、大規模な養鶏場が同地域でのH7N9拡散において重要な役割を果たした可能性は低いと指摘している。

 このことは、家禽類が野生の鳥と接触する可能性が高い小規模の飼育場と、地方市場での感染した家禽類の取引が、H7N9ウイルス拡散の重大な経路になっているとするこれまでの研究を裏付けている。(c)AFP