【4月15日 AFP】気候変動によって海の酸性化が進む中、魚が生存本能を失っていることが、14日に発表された研究で明らかになった。研究は、酸性に傾いているパプアニューギニア周辺のサンゴ礁の海で行われた。

 研究を主導したオーストラリアのジェームズクック大学(James Cook University)のフィリップ・マンデイ(Philip Munday)教授は「魚は天敵のにおいを避けるのが通常だが、魚たちは今や天敵のにおいに引かれるようになっている。信じられない」とAFPに述べた。

 また魚たちには、巣から離れた場所まで移動する様子もみられたとしながら、「行動がよりアクティブになっている。魚にとっては危険な行動だ。天敵の餌食になりやすくなる」と説明した。

 地球で放出される二酸化炭素の約30%が海水に吸収され、海水が酸化している現実を考えれば、今回の研究は重要な意味をもつ。

■「運動量」ではなく「行動」に影響

 研究は、パプアニューギニア周辺の海底火山から上がってきた泡で二酸化炭素の濃度が高くなった海域で行われた。この海域についてマンデイ氏は、最適な「自然の実験室」と説明する。

 研究対象となった海域では、サンゴの成長がみられなかった。だが、数十年後に多くの海域で予想される二酸化炭素の濃度と同水準の値を示す、少し離れた周縁部では、特殊なサンゴ礁が確認された。

 研究の共同執筆者であるジョディ―・ラマー(Jodie Rummer)氏は、海水の二酸化炭素量の増加が魚の行動に影響を及ぼしているが、運動量には影響を及ぼしていないようだと語る。声明で同氏は、「二酸化炭素濃度の高い海域周辺の魚の代謝率は、近くの『健康なサンゴ礁』の魚と同じだった」と述べ、「つまり、将来予想される海水の酸化は、魚の運動量ではなく、魚の行動そのものに影響を及ぼすかもしれない」と続けた。

 研究は、ジェームズクック大学と豪海洋科学機関(Australian Institute of Marine Science)、米ジョージア工科大学(Georgia Institute of Technology)、米地理学協会(National Geographic Society)が共同で行った。(c)AFP