■インフルエンザやがん予防のワクチンにも「拒否感」

 専門家らによると、ワクチンに対する「拒否感」はインフルエンザの予防接種などにも拡大しているという。

 性交渉によって感染し、女性では子宮頸がん、男性では頭部や頸部、さらには性器や肛門でがんを引き起こすとされるHPVを予防するためのワクチン3種類の接種を拒否する人があまりに多いことに、医師たちは驚いているという。

 9歳から接種可能で、性交渉を持つようになる前の就学期に接種しておくことが望ましいとされているこのワクチンは、2012年の段階で、19歳~26歳の若者のうち、女性は3人に1人しか接種しておらず、男性に至ってはわずか2.3%の接種率にとどまると、CDCは報告している。

 米政府の医務総監補も務める、国立予防接種・呼吸器疾患センター(National Center for Immunization and Respiratory Diseases)のアン・シュチャット(Anne Schuchat)所長は、「ワクチンによってがんを予防しうるという考えは、医者から見ればとても画期的なことなのに、それが世間では受け入れられないのに驚かされる」と話す。

 事実、ワクチンに対して懐疑的な見方をする人々に対し、その効用をいかに伝えるかとなると、専門家らは途方に暮れてしまう。

 こうした現状に対してブルーム教授は、ワクチンは自らの成功の犠牲者となってしまったと考えている。

「はしかによって失明した子どもや、百日ぜきのせいで精神遅滞を患ってしまった子どもを実際に見たことがないなら、幼稚園や小学校低学年の子どもたちの、豊かで幸福に満ちている素晴らしい世界に、ワクチンによって予防されている問題が存在しているということを理解するのは非常に難しい」

(c)AFP/Kerry SHERIDAN