【2月5日 AFP】過去17年間に確認された5番目の新型インフルエンザとなるH10N8型鳥インフルエンザで、人では世界で初めて感染した女性が昨年12月に死亡した中国では、1月にも新たな感染者1人が見つかり、科学者らが注意を呼び掛けている。

 5日の英医学誌「ランセット(Lancet)」に発表された報告によると、H10N8型の遺伝子プロファイルには懸念要素があり、厳重な監視が必要だと警告している。H10N8型ウイルスは肺の深部の組織を侵し、人から人へと感染しやすい特徴を持つ可能性があるという。

 当局では12月6日に南東部の江西(Jiangxi)省の省都・南昌(Nanchang)市で、重い肺炎と呼吸不全によって死亡した73歳の女性から採取したウイルスを分析した。この結果、中国疾病予防抑制センター(Chinese Centre for Disease Control and Prevention)の舒躍龍(Yuelong Shu)氏率いるチームは「この新型ウイルスが大流行する可能性を過小評価してはならない」と警告を発している。

 南昌市では1月26日に、人として2例目の感染が報告されている。この2人以外に、中国でH10N8型ウイルス自体が確認されたことも過去2回しかない。1度目は07年に湖南(Hunan)省の湖で採取した水質サンプルから、もう1度は12年に広東(Guangdong)省の生きた家禽類からだった。しかし今回女性から採取したウイルス株は、これら2回のときのウイルスとは異なるという。

 今回確認された遺伝子情報に大きく寄与しているのは、99年に香港で流行したH9N2型の鳥インフルエンザウイルスから変化した遺伝子だ。H9N2型ウイルスは、致死性の高いH5N1型やH7N9型にも寄与しているウイルスだ。

 鳥インフルエンザウイルスがヒトに感染するのは非常に接近した場合で、通常は人から人へ容易には感染しない。しかし当局では、今回分析したウイルスが、人から人へ容易に感染する能力を獲得する可能性を恐れている。

 H9N2型が寄与しているとされるH7N9型は昨年中国で確認され、これまでに感染者159人中71人が死亡している。また同じくH5N1型では、03年以降これまでに648人が感染、うち384人が死亡している。

 今回H10N8型ウイルスのゲノムには、過去の研究で、ほ乳類に適応した感染能力を示唆することが分かっているPB2タンパク質などの変異が認められるという。

 報告の共著者で中国疾病予防抑制センター南昌支部の劉明賓(Mingbin Liu)氏は、H10N8型の2番目の感染例は「ウイルスが引き続き流布していることを示すもので、今後さらに人での感染が起きる可能性がある」と懸念している。(c)AFP/Richard INGHAM