【1月27日 AFP】東日本大震災で被災した幼児の4人に1人が、喪失感や破壊の恐怖から生じる精神的問題を抱えていることが調査によって明らかになった。専門家らは精神科医の圧倒的な不足を訴えている。

 調査を行った専門家らによると、心のケアを至急行わなかった場合、一生を通じて影響が尾を引く子どもも出てくる可能性もあるという。

 2012年9月~13年6月にかけて岩手、宮城、福島の3県で、3~5歳児178人を対象に行った調査では、25.9%の子どもに目まいや吐き気、頭痛などの症状がみられた他、暴力を振るったり引きこもったりといった不安行動を示す子どももいた。子どもたちは友達を失ったことや、自分の家が破壊された光景を目にしたこと、親と離れ離れになったこと、岸に押し寄せた巨大津波を見たことなどにより傷ついていた。

 東北大学医学部小児科の呉繁夫(Shigeo Kure)教授が率いる研究グループによれば、必要なケアを受けなかった子どもは、後になってさらに深刻な問題を生じる可能性があるという。

 呉教授はAFPの取材に対し、そうした問題には発達障害や学習障害が含まれ、学業達成や就業への悪影響も懸念される他、震災に関連した体験の影響で人とのコミュニケーションに問題を抱えることもあると語った。

 精神的なケアを必要としている子どもは、東日本大震災で被災しなかった地域の子どもに比べ最大で3倍多かったという。

 呉教授は、今回調査対象となった子どもたちは、現在精神的ケアを受けていたり、今後数年にわたって受けていくが、もう一つの問題はケアの必要性が把握されていない子どもたちとどのように接触していくかだと語った。一見、普通に生活を送っているように見えても、夜中に突然起きたり爪をかんだりといった医師の注意を必要とする行動を示している子どもがたくさんいるのではないかと、呉教授は懸念している。

 さらに、地方部には子どものための精神科医が不足していることも、事態をより難しくしているという。例えば東北地方で最も大きく人口100万人を超える都市、仙台でも小児精神科医は呉教授の知る限り、数えるほどだという。

  毎日新聞によれば、調査に参加した国立成育医療センター(National Center for Child Health and Development)の奥山真紀子(Makiko Okuyama)医師は、地震災害の後に子どもの精神的ケアはすぐに行う必要があることが知られているのに、今回の調査は震災後1年半も経ってから行われた点を懸念している。(c)AFP/Kyoko HASEGAWA