【12月2日 AFP】最近の太陽表面は、驚くほど穏やかな状態が続いており、黒点の数が20世紀のどの時期よりも少なくなっている。この現象に興味をそそられた科学者たちは、それがこの地球上で何を意味するのかに思いを巡らせている。

 黒点の数はおよそ11年周期の太陽活動周期にあわせて増減し、1日で突発的に増加した後に急激に活動が弱まり、その後にまた活発になったりする。

■観測史上最低レベル

 だが「サイクル24(第24太陽活動周期)」と呼ばれる現在の周期は、あまりにも不活発なために科学者らを驚かせている。サイクル24が2008年に始まってからこれまでに出現した黒点の総数は、過去250年間に観測された平均値を大きく下回っており、実際に半数にも満たない。米海洋大気局(National Oceanic and Atmospheric AdministrationNOAA)の物理学者、Doug Biesecker氏は「これは、宇宙時代50年で最弱のサイクルになっている」と語る。

 黒点から放射される強烈な電磁エネルギーは、太陽の紫外線放射やX線放射、太陽嵐などに重大な影響を及ぼす。

 太陽嵐は、地球上の通信網や電子ネットワークを遮断する恐れがある。また、黒点活動は、地球の気候にも影響を及ぼす可能性がある。

「サイクル23」は2000年頃に「極大」に達し、その後、同サイクルの活動は徐々に弱まり、2008年に「極小」となった。科学者らはこの時点を現サイクルの始まりとした。サイクル23の終わりに太陽活動が極小になったことで、天文学者らはサイクル24が低調になると予測したが、現実は予想をさらに下回った。

 サイクル24の初年度には、太陽活動は上昇するはずだったが、黒点が1個も出現しない日が合計で266日も観測された。

 Biesecker氏は「黒点出現予測の最大値は90個だった」として、この1年で活動が上昇してきたにもかかわらず「90個に近づきそうにないのは極めて明白だ」と指摘している。同氏はまた、「黒点数は昨年、最高で67個だった。通常のサイクルの半数にも満たない」と付け加えた。

 以前に黒点のサイクルがこれほど低調になったのは、1906年2月の「サイクル14」極大時で、1日当たりの出現数は64個にすぎなかった。

■太陽磁場の反転

 サイクル24は、もう1つ驚くべき点で、標準から外れている。

 太陽磁場は通常、各11年周期の最後のあたりで北極と南極の磁場の性質が同時に反転し、極性が変化する。磁場の強度は、極性反転が起きている間はゼロ近くまで低下し、極性が逆になったら再び高くなると科学者らは説明する。

 だが今回は、これとは異なることが起きているようだ。北極ではすでに数か月前に極性が反転しており、現在は南極と同じ極性になっている。

 最近の人工衛星による観測によると「南半球は近い将来に反転するはずだ」と米スタンフォード大学(Stanford University)ウィルコックス太陽観測所(Wilcox Solar Observatory)のトッド・ホークセマ(Todd Hoeksema)氏は言う。

 同氏はこの現象について心配していないようだが、科学者らは、サイクル24が「異常」な周期になるのかどうか、あるいは現在の太陽活動の低下が次のサイクルにまでも長引くのかどうかを見極めるために、太陽を注意深く観測している。Biesecker氏は「それが判明するまでに、まだゆうに3、4年はかかるに違いない」と言う。

■地球の気候への影響は?

 またこれは、長期にわたる太陽活動低下期の始まりかもしれないと推測する研究者もいる。

 前回同様の現象が発生した、17世紀半ば頃から18世紀前半頃の間のいわゆる「マウンダー極小期(Maunder Minimum)」には、黒点がほとんど観測されなかった。この時期、地球上では気温が急激に低下し、欧州と北米でいわゆる小氷期(Little Ice Age)が起きた。

 黒点の数が少ない状況がさらに続くと、地球の気候が再び影響を受ける可能性が出てくる。

 だが地球温暖化のおかげで、再び氷河期に見舞われる可能性は低いだろう。「事態はまだ寒冷化に向かっていない。それほど速やかに(黒点の数が)上昇していないだけだ」とBiesecker氏は述べている。(c)AFP/Jean-Louis SANTINI