【10月31日 AFP】10年前に中国を中心にアジアで800人近くが死亡したSARSSevere Acute Respiratory Syndrome、重症急性呼吸器症候群)の原因となったSARSコロナウイルス(SARS-CoV)に似たSARS様コロナウイルス(SL-CoV)が動物を媒介せずにウイルス源のコウモリから直接、人に感染する確証を得たとする国際科学者チームの論文が30日、英科学誌ネイチャー(Nature)で発表された。

 SARSを引き起こしたウイルスの起源は中国に生息するキクガシラコウモリと考えられている。だが、これまで、このコウモリから検出されたSARS様コロナウイルスの遺伝子からは、人の細胞に直接付着する能力が確認できなかった。

 SARS様コロナウイルスは中国の野生動物市場で売られているジャコウネコからも検出されていることから、ジャコウネコがコウモリから検出されたウイルスが人に感染可能な形態に変異する中間宿主になっていると考えられてきた。

 これに対し、論文の共同執筆者で米ニューヨーク(New York)を拠点にする国際環境NPO「エコヘルス・アライアンス(EcoHealth Alliance)」のピーター・ダスザック(Peter Daszak)氏はAFPのメール取材に、中間宿主は不要であることを論文の中で明らかにしていると述べ、チームは中国のキクガシラコウモリから検出したSARS様コロナウイルスに人の細胞受容体(レセプター)への接着能力があることを発見したと説明した。

 論文の著者らは、現在もパンデミック(世界的大流行)を引き起こす可能性があるウイルスが中国のコウモリから検出されたものを含めて複数存在する中で、今回の発見は公衆衛生における感染対策の面で非常に大きな意味があると述べている。(c)AFP/Mariette LE ROUX