【10月10日 AFP】日本の成人は、他の先進23か国・地域の成人よりもはるかに優れた読解力と数的思考力を持っているとの調査結果をまとめた報告書が、経済協力開発機構(OECD)により8日、発表された。OECDはこの結果について、欧州に対し警鐘を鳴らすものと述べている。

 調査は、OECD加盟22か国・地域とロシア、キプロスに住む16~65歳の16万6000人を対象に実施された。中でも欧州各国の成績が悪く、欧州連合(EU)当局者らは、上位国との差を縮めるための迅速な行動を呼び掛けている。

■日本の中卒者の読解力は西伊の大卒者より上

 読解力は1~5で評価された。簡単な文章の読解に困難があることを意味するレベル1以下の成人は、日本ではわずか4.9%だった。

 最高レベルの5は、難解な文章からの情報を検索・処理し、証拠に基づいた議論を判断できる能力があることを指す。レベル4と5を合わせた人の割合は、日本とフィンランドではおよそ5人に1人に上ったが、スペインやイタリアでは20人に1人未満だった。OECD平均は15.5%だった。

 また報告書によると、日本の25~34歳の中卒者は、スペインやイタリアの同年代の大卒者よりもはるかに高い読解力を持っていることが分かった。

 数的思考力でも同様に、日本が他を圧倒した。基本的な和算に困難があることを指すレベル1以下は、日本ではわずか8.1%だったが、フランスでは28%、イタリアとスペインでは30%を上回った。

 欧州委員会のアンドローラ・ワシリウ(Androulla Vassiliou)委員(教育・文化・多言語・青年担当)は、今回の調査で「生産年齢にある欧州市民のうち、5人に1人で読解力が低く、4人に1人で数的思考力が低いことが確認された。われわれの希望する雇用、生産性、イノベーション、競争力、社会参加のレベルを達成するためには、欧州はこの問題に迅速な対策をとらなければならない」と述べた。

 また、ITを活用した問題解決能力では、スウェーデンが1位で、フィンランドと日本が続いた。

■読解力と雇用に関連性

 報告書によると、読解力の高い人は低い人と比べて賃金が60%高かった。また失業率は読解力の低い人ほど高く、レベル4または5の人が4%だったのに対し、レベル1以下の人は7%だった。また読解力の低い人は健康面で劣り、市民参加が少なかった。

 さらに報告書は、「外国語を母語とする移民は現地出身の人よりも読解力、数的思考力、ITを活用した問題解決能力の習熟度が大幅に低かった」と述べている。(c)AFP/Charlotte HILL