【8月13日 AFP】心臓まひを起こし死の淵に立った人が時に経験する、まぶしい光などの鮮明な「臨死体験」は、科学的に説明できるかもしれないとする研究論文が12日、米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に掲載された。脳は、血流が停止した後も30秒程度、活動を続けることが分かったという。

 研究を行った米ミシガン大学(University of Michigan)の科学者らは、実験用ラット9匹に麻酔薬を投与して心停止を誘発させ、脳電図を記録した。その結果、心臓が停止してから30秒間にわたり脳の活動が急増し、精神状態が非常に高揚していることが分かった。

 研究に参加した同大学のジョージ・マシャワー(George Mashour)教授(麻酔学・神経外科学)は、「脳の活動レベルが高いことに驚いた」と話す。「臨死状態では、意識がある状態を示す電気信号の多くが覚醒状態のレベルを上回っていたことが分かった。これは、臨床死の初期段階において、脳が系統立った電気活動を行うことが可能であることを示唆している」。同様の結果は、窒息状態のラットの脳活動にもみられたという。

 論文の主著者、ジモ・ボルジギン(Jimo Borjigin)氏は、「心停止中の酸素の減少、または酸素とブドウ糖の減少によって、意識的過程の特徴である脳活動が刺激される可能性が、この研究で示された。また、心停止を経験した多くの患者が語る臨死体験を説明するための、初めての科学的枠組みが提供できた」と話す。

 心停止から蘇生した患者の約20%が、医師らが臨床死と呼ぶ段階でなんらかの視覚的な経験をしたと報告している。(c)AFP