【7月4日 AFP】オーストラリアのチャールズ・ダーウィン大学(Charles Darwin University)の研究チームは3日、毒を持つオオヒキガエルがオーストラリア固有の淡水ワニであるオーストラリアワニを絶滅に追いやる恐れがあるとの研究成果を専門誌Wildlife Researchで発表した。

 オオヒキガエルが生態系に及ぼす影響を調べていた同大の研究チームによると、オオヒキガエルが入ってきた地域でオーストラリアワニ生息数の「急激な減少」がみられたという。得ることのできる餌が少ないため発育不良の状態にあると考えられているオーストラリアワニは、オオヒキガエルを大量に食べるようになってきていると研究者らは指摘する。

 研究チームを率いたアダム・ブリトン(Adam Britton)氏によれば、北部特別地域(Northern Territory)のビクトリア川(Victoria)とブロー(Bullo)川流域にはオオヒキガエルがやってくる前はオーストラリアワニが28匹生育していたが、オオヒキガエルがこの地域に入ってきた後の2007~08年に実施した調査では10匹に減っていた。

   「ワニの死骸を調べたところオオヒキガエルを食べた形跡があった。オオヒキガエルがこの地域に入ってきたことがオーストラリアワニの生息数減少の直接的な原因だということを強く示唆している」と同氏は言う。

■害虫駆除目的で移入したが有害生物に

 オーストラリアワニは、成長しても全長最大1.7メートル、雌の場合は0.7メートルで、他の淡水に生息するワニの半分ほどの大きさだ。オーストラリアワニが遺伝学的に他の淡水ワニと異なる種なのかどうかは分かっていない。

 ブリトン氏は、「オオヒキガエルを食べたオーストラリアワニが死ぬことは周知の事実だ。われわれが懸念しているのは、オーストラリアワニが小型で、他に代わりになるような餌がないことから、オオヒキガエルによる影響を大きく受けているかもしれないということだ」と説明し、オオヒキガエルが繁殖すればオーストラリアワニが絶滅する恐れがあると指摘した。オーストラリアワニは既に数百匹に減ったと考えられており、「ある調査対象地域では完全に姿を消した」という。

 ただ、別の調査対象地域1か所でオーストラリアワニの生息数に目立った変化がみられなかったことや、オオヒキガエルの毒を避けるため後ろ脚だけを食べるようになった例も観察されたことなどから、オーストラリアワニの生存には希望もある。

 オオヒキガエルは皮膚が固く、背中にイボがある。頭部にある袋から分泌される毒液はヘビやワニを殺すほど毒性が強い。生息地はオーストラリア北西部で、1年に50キロメートルのスピードで生息範囲を拡大している。もともと、コガネムシの繁殖を防ぐため1930年代にハワイ(Hawaii)から移入されたが、繁殖力が強いことや天敵がほとんどいないことから、有害な生物になってしまった。(c)AFP