【7月2日 AFP】国際原子力機関(International Atomic Energy AgencyIAEA)の天野之弥(Yukiya Amano)事務局長は1日、現在に至るまでの「核テロ」防止に成功している状況に満足し、油断するようなことがあってはならないと警鐘を鳴らした。

 天野事務局長は、オーストリア・ウィーン(Vienna)で開催された世界約110か国から35閣僚を含む1200人が出席した会議で、「核の安全保障をめぐってはこの10年で多くの成果がみられた」と述べた。ただ、放射性物質をまき散らす「ダーティーボム(汚い爆弾、放射能兵器、RDD)」の都市部での使用や核施設における妨害工作によってもたらされる被害は壊滅的となるとして、誤った安心感を抱いてはならないと警告した。同事務局長は、「核テロ」の最大の脅威として「核爆弾」、「ダーティーボム」、「核施設への攻撃」の3つを挙げた。

「ダーティーボム」は攻撃手段として使用される可能性は高いが、殺傷力は低い。それでも、大パニックを引き起こす恐れがある。

 米シンクタンク「戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International StudiesCSIS)」のシャロン・スクアッソーニ(Sharon Squassoni)氏は、AFPの取材に、「もし(4月に起きた)米ボストン・マラソン(Boston Marathon)爆破事件でRDDが使われていたら、事件のトラウマ(精神的外傷)はより大きく、長く残る後遺症となっていただろう」と指摘した。

 IAEAは2012年、放射性物質の不法所持や密売17件、盗難・紛失24件を把握しているが、これは「氷山の一角」に過ぎないと考えているという。多くはロシアのチェチェン共和国や旧ソ連圏のグルジアやモルドバで起きており、2011年には兵器級ウラニウムを売買しようとした数人が逮捕されている。

「ダーティーボム」に用いられる可能性がある放射性物質は、病院や工場、大学の研究施設などでも使用されており、容易に盗み出せる可能性があるという。(c)AFP/Simon STURDEE