【6月4日 AFP】核兵器保有国8か国のうち5か国が保有する核弾頭数を削減ないし前年並みに維持した中、中国、インド、パキスタンの3か国がその数を増やしたとする年次報告書を、スウェーデンのシンクタンク、ストックホルム国際平和研究所(Stockholm International Peace Research InstituteSIPRI)が3日、発表した。

 SIPRIは、中国が保有する核弾頭は2012年の240発から250発に増加し、パキスタンも12年から約10発増やして100~120発となり、インドも約10発増やして90~110発になったとしている。

 報告書は、2008年以降、インド・パキスタン、中国・日本、韓国・北朝鮮間などで緊張が高まりアジアの平和が「不安定」になっていることを考慮すると、核弾頭を増やす動きへの憂慮はいっそう強くなると述べている。

「各国は直接的な衝突を回避しており、また相手国内の反政府運動への支援を互いに中止したものの、数十年来の不信が今も残り、また経済的統合に政治的統合が追いついていない」とSIPRIは指摘した。

■他の核保有国は削減や維持

 核弾頭を削減したのはかつての超大国のロシアと米国の2国のみ。ロシアは1万発から8500発に削減し、米国は8000発から7700発に削減した。一方、フランスは300発、英国は225発、イスラエルは80発を維持した。

 SIPRIが発表した弾頭数は大部分が推定。中国は完全に不透明で、ロシアが徐々に開放的でなくなってきているなど、それぞれの国によって透明度が異なるためだ。また、SIPRIは北朝鮮とイランの核兵器開発計画がまだ初期段階にあると判断しており、両国を核保有国に含めていない。

■生物・化学兵器の削減に遅れ、平和維持部隊の減少、国内紛争の国際化

 SIPRIによると、生物・化学兵器弾頭を削減する取り組みも歩みが遅い。米国とロシアは化学兵器の破棄を約束しているが、2012年の時点では、まだその約束を果たしていない。またシリアは、外国からの攻撃があった場合には化学兵器を使う準備があると述べている。

 また、世界各地に派遣されている平和維持部隊隊員数は、2012年に10%以上減少した。これはアフガニスタンからの国際部隊の撤退が始まったことが一因だという。

 SIPRIは、国内紛争の一方の勢力を外国が支援することにより、国内紛争が国際化する例が近年増えていることを示し、「そのような関与はしばしば、死亡率の増加や紛争の長期化をもたらしている」と指摘した。

 世界の軍事費は2012年に0.5%減少した。減少は1998年以来初めて。また、世界の兵器輸出国の第5位に、英国を抜いて中国がつけた。輸出国トップは米国で、ロシア、ドイツ、フランスが続いた。(c)AFP/Hugues HONORE